研究活動

常設研究会 ― 協同組合法制度研究会 第27回報告 ―

○ 開催日時
2017年5月29日(月) 17:00~19:00
○ 開催会場
プラザエフ5階 会議室
○ 参加者
27名 (委員5名、オブザーバー21名、事務局1名)
テーマ
報 告:
小栗崇資 氏(駒澤大学経済学部 教授)
テーマ:
「国際会計基準の検討状況について」
概要

 小栗崇資先生(駒澤大学経済学部 教授)より、国際会計基準の検討状況について、報告をいただき、質疑・意見交換を行った。

報告の詳細

 IASB(国際会計基準審議会)での「協同組合の出資金が資本か、負債か」をめぐる検討は、現時点ではまだディスカッションペーパーが公表されていないので、結論的には現時点では具体的な内容として報告するものはない。本日は、議論が始まってから、10年以上経っているので、議論の経過をおさらいするとともに、協同組合の出資金の取り扱いに関する考え方について報告する。

1.国際会計基準の設定・導入の歴史的経過

  • 国際的な金融安定化を図るために、金融・証券システムのグローバルスタンダードが必要だという認識が生まれ、主要国の代表と国際金融機関や規制監督機関などによって基準作りが進められた。国際会計基準(IFRS)もその一つで現在はIASBが担っている。
  • 日本では、企業規模により様々な会計基準が存在しているが、IFRSが浸透していく過渡期だ。

2. 負債と資本の区分をめぐる議論

  • 2003年12月の改訂IAS32号で「召喚されることを約されているものは負債である」ということが公表され、協同組合にとっては出資金が負債とされることになり、大きな問題となった。その後解釈指針で、「償還を無条件に拒否できる権利を有している場合は資本となる」ということが公表された。欧州の協同組合はこれを全体に法的対応を進めた。
  • 2010年頃に一時議論が中断し、2015年頃から再開した。今年秋にディスカッションペーパーが公表される予定となっている。

3. 資本という概念

  • 資本の概念は、歴史的変遷しているが、現在は資産を全面時価評価する傾向にあり、資本についても投資家にとっては企業価値を表すものとして評価される。
  • 生協における資本概念を考える場合、非営利組織であるが、出資配当の位置づけが問題となる。

4. 出資金が負債となった場合の影響と対応

  • 影響としては、信用事業や共済事業の財務基盤(資本金)や支払余力比率などが大きく変わる。
  • 生協の会計は、厚労省令で詳細を規定しているので、政策的に独自規定を残す余地は大きいと思う。
配布資料

報告レジュメ「国際会計基準の検討状況について」

  1. ①「負債と資本についてのASBJコメント」
  2. ②「FICEの議論資料一覧表」
  3. ③「国際会計基準と生協出資金」(『生協総研レポート』No.64、小栗崇資)
その他

(1)次回第28回研究会は

  • 日時:2017年7月31日(月)午後5時~7時
  • 報告:「世界の協同組合法制の動向 ~統一化、調和化と日本への示唆」

    明田 作 氏(農林中金総合研究所 客員研究員)

(2)『生協総研レポート』 発行計画を事務局より提案し、確認した。