研究活動

常設研究会 ― 協同組合法制度研究会 第21回報告 ―

○ 開催日時
2016年5月16日(月) 18:00~20:00
○ 開催会場
プラザエフ5階 会議室
○ 参加者
15名(委員6名、オブザーバー7名、事務局2名)
テーマ
報 告:
早瀬 悟史 氏(全国森林組合連合会 組織部林政課担当課長)
テーマ:
「森林組合制度と森林・林業施策の変遷」
概要

 早瀬悟史氏(全国森林組合連合会)から「森林組合制度と森林・林業施策の変遷」というテーマで報告をいただき、その後、質疑・意見交換を行った。報告の具体的な内容は(1)森林組合の概要、(2)森林組合制度の変遷、(3)これからの森林組合、の3つであった。報告の中で、日本の森林組合制度は協同組合的性格と公益的性格の2つの性格を有していることが述べられた。報告後の意見交換では、諸外国の森林組合制度は日本とどのように異なるのかという質問が出され、特に北欧を中心とした国では森林組合は協同組合的性格に重点をおいた経済組織であるという答えがあった。この他、組合員を参加させるインセンティブは何か、組合員の意識を高めるためにどのようなことをしているか、といった点についても活発な議論が交わされた。

内容詳細
  • 森林組合の概要:森林組合は、森林所有者の経済的社会的地位の向上のための協同組織であって、組合員の加入及び脱退の自由、一人一票性、任意設立、出資割配当の制限など、組合員の権利義務や組合の管理運営について協同組合原則に立脚している。また、その事業活動は、組合員からの委託に基づく森林経営の一部の共同化を通じて、組合員の森林経営の増進を図るとともに、森林の保続培養といういわば公益的な機能の発揮にも寄与するものである。森林組合数は年々減少傾向にあり、組合員数の総数も減少傾向にある。さらに常勤役職員が0~3人の組合が2割弱を占めるなど、組織や財務の基盤が小規模・脆弱な組合も少なくない。
  • 森林組合制度の変遷:森林法が1897(明治30)年に制定され、その後1907(明治40)年に森林法に森林組合制度に関する条文が盛り込まれた。これにより森林組合が森林施業等を協同で行う団体組織として正式に位置づけられた。その後、時代の変化に伴って森林組合の機能や位置づけが度々見直され、森林組合法が改正されてきた。特に近年では、2005(平成17)年に解散・合併手続きの簡素化や員外利用制限の緩和が条文にもりこまれており、更に今国会でも森林組合法の改正が行われ(2017年4月施行予定)、森林組合が森林の保続培養等の目的に加え、林業を行う組合員の利益増進を目的とする森林経営事業を実施できるようになること、さらに森林組合以外にも森林組合連合会による森林経営事業が可能となることがあらたに条文化されることとなった。
  • これからの森林組合:森林組合は今後、次のような課題に対応していく必要がある。その課題とは、①木材価格が低く経営的に成り立たせることが極めて難しい現状に対し、自立的な経営モデルを考えていくこと、②組合員の脱退や所在不明の組合員が増加している状況に対し、組合員でいることのインセンティブを与え組合員の積極的な参加を促すこと、③森林組合をめぐる不祥事が多発している現状に対し、職員のコンプライアンス意識を高めること、である。
次回以降の予定

 次回の第22回研究会は7月25日(月)に開催する。これまでの研究会で国内の各分野の協同組合制度について一巡したので、次回以降、海外の協同組合法制度に焦点を移していく。また、これまでの研究会での報告から、日本の協同組合の法制度についてわかったこと、特長と課題などを振り返る座談会を設定する予定。