研究活動

常設研究会 ― 協同組合法制度研究会 第17回報告 ―

○ 開催日時
2015年11月30日(月) 18:00~20:30
○ 開催会場
プラザエフ5階 会議室
○ 参加者
11名 (委員4名、オブザーバー5名、事務局2名)
テーマ
報 告 :
及川 勝 氏(全国中小企業団体中央会)
テーマ :
「中小企業組合~その組織と共同事業の概要等~」
概要

 及川勝氏(全国中小企業団体中央会)より報告、その後質疑・意見交換を行った。

《及川氏の報告要旨》

 最初に及川氏から、中小企業基本法や中小企業憲章の内容をもとに中小企業施策の概要について説明があり、メンバー全員で中小企業の現状と課題について共有化した。その後「中小企業組合~その組織と共同事業の概要等~」と題して、1.中小企業団体中央会の組織と事業、2.中小企業組合制度の変遷、3.中小企業協同組合制度の特徴、4.中小企業協同組合の特質、5.中小企業協同組合の共同事業の類型、6.中小企業協同組合の共同事業の動向、7.中小企業協同組合の運営の構造、8.中小企業協同組合の活動事例(酒類業)、9.中小企業政策と中小企業協同組合、の9つの内容について報告をいただいた。

《内容詳細》

中小企業施策の概要

 現在、中小企業は約375万社あるがその7割程度が赤字であり、財政的に厳しい状況にたたされている。375万社のうち87%は20名以下の小規模企業であり、これらの企業が市場で活動する際に不当に不利な扱いを受けることがないよう、積極的に付加価値をつけ、経営基盤を強化していくことが課題となっている。中小企業憲章の中では、中小企業が地域社会と住民生活に貢献し、伝統技能や文化の継承に重要な機能を果たすことから国家の財産ともいうべき存在であると述べられており、積極的に支援していくべきであると指摘されている。

中小企業組合~その組織と共同事業の概要等~

 中小企業団体中央会は、各都道府県ごとに1つの中央会(計47)と、都道府県の中央会をとりまとめる全国中小企業団体中央会で構成されている。都道府県中央会の構成員は都道府県に存在する事業協同組合、事業協同小組合、企業組合、信用協同組合、商工組合、協業組合、商店街振興組合及びこれらの連合会、その他の中小企業関係団体である(計27,559団体等)。また、全国中央会の構成員は47都道府県中央会のほか、全国を地区とする中小企業関係組合、団体等が加入している(計349団体等)。中小企業団体中央会の事業は、中小企業の健全な発展を図ることを目的として行われるものである。具体的には、中小企業の組合の設立から、組織、事業、経営まで全般にわたる指導・支援を行うほか、中小企業及び組合等に関する調査研究、中小企業対策に関する建議・陳情等、様々な政策提言活動を行っている。中小企業協同組合を規定する中小企業等協同組合法の制定は1949(昭和24)年であるが、類似した組合制度は戦前から存在した。現在、中小企業等協同組合法では第5条に協同組合の基準として「相互扶助目的」「加入・脱退の自由」「議決権・選挙権の平等」「剰余金配当の基準」が、原則として「直接奉仕・康平奉仕」「政治的中立」が明記されている。中小企業協同組合は、所有(出資者)と経営者と利用者が一致するという三位一体の組織であるという特質をもっており、それによって企業単独では困難だった経済利益を得ることが可能となる。実例として、今治タオルの生産を手掛ける中小企業が一社では海外展開ができず、協同組合の形をとることでそれが可能となった。現在では、同業種の企業が連携する組合に加えて異業種の組合が設立されており、多様な業種がアイディアを出し合うことで新しい製品の開発等、新分野の開拓も活発に行われている。

《質疑・意見交換》

 中小企業等協同組合法と団体法との関連や、海外の同様の法律の有無等について質問や意見が出され、及川氏からの補足説明を受けた。

 次回:第18回研究会(12月21日開催)は、生協総研レポート執筆者の原稿の検討を行う。