常設研究会 ― 協同組合法制度研究会 第16回報告 ―
- ○ 開催日時
- 2015年10月30日(金) 18:05~20:20
- ○ 開催会場
- プラザエフ5階 会議室
- ○ 参加者
- 11名 (委員5名、オブザーバー4名、事務局2名)
テーマ
- 報 告 :
- 山部 俊文 氏(一橋大学 法学研究科教授)
- テーマ :
- 「独占禁止法と協同組合」
概要
山部 俊文 氏(一橋大学 法学研究科教授)より、「独占禁止法と協同組合 -近時の農協関連の事件を中心に」と題して報告いただき、その後質疑・意見交換を行った。
山部氏の報告要旨:
I.近時の農協関連の事件、II.農協関連の違反事件等の動向、III.小括、IV.独禁法22条をめぐる実務・学説の動向、V.補論:自由競争と協同・共同の4点に分けて報告があった。
I.近時の農協関連の事件:
平成24年~27年に発生した5件の農協関連の独禁法違反事件、事前相談事例(1件、平成23年)、事業協同組合の事件(1件、平成27年)の7つの事例を取り上げ、その事実の概要、公取委の命令・見解や団体への申入れ、コメントを説明した。
II.農協関連の違反事件等の動向:
平成2年以降発生した約20件の事件・裁判例について、その動向を説明。平成21年以前は農協系統外の流通・販売ルートでの販売・購入を阻止・妨害する、というのが事件の基本パターンであり、「競争排除型」の競争制限が問題となっていた。平成22年以降は、不当な取引制限・カルテルが問題となっている。
III.小括:
平成22年以降は、農協自らあるいは他の事業者を慫慂して、カルテルにより最終的には農家に高価格で商品・役務を提供する行為、あるいはそれに加担する行為を行っており、一見すると「論外」とも思われるが、その背景には複雑な事情もあるようだ。
IV.独禁法22条をめぐる実務・学説の動向:
農協を含む協同組合には、法22条の適用除外規定があるが、①組合の事業活動が問題となるときは、3条(私的独占又は不当な取引制限)、19条(不当な取引方法)違反に、②事業者団体としての活動が問題となるときは、8条(団体としての行為規制)違反となる。従来、独禁法が適用された場合、①当該組合の行為が「組合の行為」ではないとされて適用されたのか、②但書(禁止行為)に基づいて適用されたのか、明確でなかった。
V.補論:
自由競争と協同・共同:自由で公正な競争と、協同・共同は両立するというのが現在の考え方となっている。協同組合の行為が独禁法的な秩序に適合するのは、①それが消費者・小規模事業者の協同・共同で市場の競争制限の弊害をもたらすことはないから、とする考え方と、②市場において競争制限の弊害があっても、大企業への対抗力を獲得するものであれば良い、とする考え方がある。個々の事件においては、その両面を具体的に見ていくことが必要だと思われる。
独禁法の規制は基本的に公取委の行政規制であり、実際に規制を発動するかどうかについて公取委の裁量にゆだねられている。独禁法22条だけでなく、個々の組合の準拠法を含め、現行の法制度の建付けは、さほど悪くないように思える。
討議:22条の適用除外をめぐる解釈や論争、農協のガイドライン制定以降の違反行為の変化、海外の独禁法との比較など、について質問や意見が出され、山部氏からの補足説明を受けた。
次回、第17回研究会(11月30日開催)は、及川 勝 氏(全国中小企業団体中央会 政策推進部長)に報告をいただくことを確認した。
研究会(2014年度~15年度)の活動報告を『生協総研レポート』として刊行すること、およびその執筆者の提案を事務局より行い、確認した。