研究活動

常設研究会 ― 協同組合法制度研究会 第15回報告 ―

○ 開催日時
2015年9月28日(月) 18:05~20:10
○ 開催会場
プラザエフ5階 会議室
○ 参加者
12名 (委員5名、オブザーバー5名、事務局2名)
テーマ
報 告 :
関 英昭 座長
テーマ :
「農協法の改正と協同組合の将来」
概要

 関英 昭 氏(青山学院大学 名誉教授、本研究会委員)より、「農協法の改正と協同組合の将来」と題して報告いただき、その後質疑・意見交換を行った。

関氏の報告要旨:
 I.団体法における協同組合の位置づけについて、II.農協法改正案の問題点と意見、III.まとめ、IV.今後の対策と協同組合の方向性、の4点に分けて報告があった。

I.団体法における協同組合の位置づけについて:

 テンニースのゲマインシャフトとゲゼルシャフトの概念整理と、テンニースが「ゲマインシャフト的経済原理がゲゼルシャフト的生活原理に適合するような形で、ゲノッセンシャフト(協同組合)が登場してきた」という主張を紹介し、協同組合の3つの特徴を挙げた。①株式会社のように利己心や打算といった合理性、効率性を持つ、②家族や共同体のように親切、良心、誠実、正直といった人間的価値観を持つ、③選択意志(一定の目的を持った行動に向けられた意志)に基づいて形成された人的結合体である。

II.農協法改正案の問題点と意見:

 改正案7条が営利目的規定を削除した理由について、7条2項及び3項から「(組合は)収益を組合員に分配するために事業を行え」と言っているように読める、これは「協同組合組織の本質にかかわる重要な点」であると指摘した。組合員の所得を増大するための最大の方法は、農業者が自分の作った農産物に自由に価格を設定できることであり、農産物からの収入を拡大することで、配当による収益拡大ではない、と改正案を批判した。

 その他各論(組合員、機関、組織変更)の各改正内容についても、疑問点、問題点を説明した。

III.まとめ

 日本の農協がその事業を通じて、社会におけるセーフティネット機能を果たしてきた。国は、協同組合組織が重要な社会資本であることを認識し、社会的協同組合や協同組合基本法を制定すべきであることを提起した。

*上記、I~IIIは、8月22日に開催された農林水産委員会での農協法改正審議における参考人としての報告内容に基づくもので、以下のIVは、本研究会で新たに報告された内容である。

IV.今後の対策と協同組合の方向性

  1. (1)協同組合の今後の活動を発展的にしていく上で、会社法の制度を活用することが考えられる。
  2. (2)格差社会が日常化する中で、所有と経営が分離した大会社には労働者や他人への配慮などは期待できない。協同組合は、その価値観に基づき役割を果たしていくことが期待されている。
  3. (3)今後の社会の中では、①購買事業のほか、医療、福祉等の事業を通じて地域社会の中での役割を果たす、②エネルギー自給を始め、地域密着型のビジネスモデルを作っていくこと、③食文化、食育、地産地消などを広げること、④行政にすべてを任せるのではなく、組合員自らができることは自分でする、組合員自身が新しいビジネスモデルを考えること、⑤教育・人材育成の強化していくこと、⑥国際的な協同組合の連帯関係を進めること、などの協同組合の方向性を提起した。

討議:農協法改正での分割規定で出資金や組合員の扱いはどうなっているか? コミュニティの概念、捉え方。株式会社制度の活用を考えた場合の検討事項など、について議論した。

 次回、第16回研究会(10月30日開催)は、山部 俊文 氏(一橋大学)から報告を受けることを確認した。また、第17回研究会は、及川 勝 氏(全国中小企業中央会 政策推進部長)に報告をいただくことを確認した。なお、日程は11月30日(月)を予定しているが、事務局が及川氏と調整のうえ確定することとした。