常設研究会 ― 協同組合法制度研究会 第14回報告 ―
- ○ 開催日時
- 2015年7月27日(月) 18:05~20:00
- ○ 開催会場
- プラザエフ5階 会議室
- ○ 参加者
- 10名 (委員5名、オブザーバー3名、事務局2名)
テーマ
- 報 告 :
- 宮部 好広 氏
- テーマ :
- 「生協法運用上の諸問題」
概要
宮部 好広 氏(日本生協連総合運営本部 法規会計支援部 部長、本研究会委員)より、「生協法運用上の諸問題」と題して報告いただき、その後質疑・意見交換を行った。
宮部氏の報告要旨:
法の解約・運用において、大きな役割を占めているのは、一般に①行政の通知・通達等で示される解釈・運用指針、②判例、③学説の3つがある。生協法の場合は、①の行政の通知・通達は存在しているが、②はほとんどなく、③はあまりない。機関運営部分については、準用を含めて会社法モデルが幅広く採用されているため、会社法の判例、学説が一定に参考になる。
本日は、生協特有の問題や協同組合に特徴的な領域の問題を取り上げて、どのように解釈し対応しているか、4つの事例を報告したい。
(1)事業の種類に関する問題
- 問題の所在:生協が発電した電力を組合員ではない電力会社に有償で提供することは、生協法の員外利用規制との関係でどうか、また事業の種類規制で問題はないか?
- 上記の発電事業は組合員への提供を目的としていないので、員外利用には該当しない。生協が行う事業との関係で電力使用は必要不可欠であるところ、電力会社に電力を供給することにより、電力代金を減額する(電力料金の節約)ことで効率的経営を図る手段と理解し、他の事業への付帯性があると解することができるのではないか。
(2)子会社・子会社等について
- 問題の所在:生協法では、「子会社」および「子会社等」について定義している。生協が①全額出資している子会社、②全額出資ではない子会社等、が行う事業の範囲や事業の利用について、どのように考えればよいか?
- 生協法は、組合という事業主体を認めており、組合の事業は法の規定に従い組合を通じて行うことが原則であること、また子会社等の設立や運営に関しては組合員の意思が反映されなければならないこと等を考慮し、生協法の趣旨を踏まえ適正な運営に努めることが求められる。①全額出資子会社では、事業の範囲や事業の利用について生協と同様に扱う。②全額出資でない子会社等では、組合員の生活の文化的経済的改善向上という生協の事業目的との関係でとらえて考えるものとする。
(3)組合員名簿と個人情報保護法との関係について
- 問題の所在:生協法では組合員及び組合の債権者は、組合員名簿の開示(閲覧・謄写)を請求することができるとされ、正当な理由がなければ拒めないこととなっている。いっぽう、個人情報保護法は個人情報の第三者提供は原則として本人の事前同意が必要としているが、例外として「法令に基づく場合」があり生協法の組合員名簿の開示はこれに該当する。開示請求を受けた場合の対応上の留意点は何か?
- 開示請求を受けた際は、①開示請求が法の想定した開示目的に沿ったものかを判断し、②開示項目は「氏名及び住所」「加入の年月日」「出資口数及び金額並びにその払込みの年月日」に限定される。
(4)自己取引・利益相反取引について
- 自己取引・利益相反取引については、会社法と同様の規定があるが、生協においては組織構造上形式的に見ると、自己取引・利益相反取引の行為類型に該当する取引が生じやすい。
- 実際の解釈では、基本的に会社法の通説的解釈をベースとしつつ、特に連合会と会員生協との間の取引については、生協の組織特性を踏まえた調整が必要となる。日本生協連では、ガイドラインを設けて運用の参考としている。
次回、第15回研究会(9月28日開催)は、関英 昭委員から報告を受けることを確認した。