研究活動

常設研究会 ― 協同組合法制度研究会 第13回報告 ―

○ 開催日時
2015年6月29日(月) 18:20~20:00
○ 開催会場
プラザエフ5階 会議室
○ 参加者
11名 (委員4名、オブザーバー5名、事務局2名)
テーマ
報 告 :
村上 彰一 氏
テーマ :
「生活クラブ生協の分割とガバナンス」
概要

 生活クラブ生協・東京の村上専務より生活クラブ東京・ブロック単協化について以下の報告があった。

1.生活クラブ東京・ブロック単協化について

 1993年のブロック単協化設立の背景には、以下のような生活クラブの組織の考え方があった。

  1. (1)戦略ではなく主体ありきの組織づくり。
  2. (2)地域の生活者を運動の主体とし、生活の在り方を問う。基礎自治体を意識して、ワーカーズ型の小規模協同組合からなる地域社会をつくる。
  3. (3)80年代の単協の広がりとの関係で組合員の参加・主権を問う中で、地域密着型の生協づくりをめざす。

2.ブロック単協の設立経過

  1. (1)地域社会を自ら治めていくための生活者運動を構築するというビジョンに基づき、自治体単協化を目指しつつ、過渡的にブロック体制を敷く。
  2. (2)当初は「東京」を分割や分権を検討したが、生協法が分割規定を持たないため、ブロック単位に新生協法人を設立し、「東京」を存続させつつ主な事業を新生協(ブロック単協)に移行させるという方針をとった。
  3. (3)ブロック単協の設立について、全支部と組合員からの賛同を得る必要があったが、2支部の解散などの軋轢もあった。93年12月に23区南生活クラブ、94年に、北東京生活クラブ、多摩北生活クラブ、多摩南生活クラブを設立した。

3.ブロック単協の運営体制の20年の中での変遷

  1. (1)2000年から組合員活動の基礎組織である支部を「まち」に転換した。
  2. (2)90年代は、女性の就業化に伴う個別配送の時代の波に対応しきれず、事業が停滞した。
  3. (3)その陰で、高齢化の中で福祉事業に参入し、新しいスタイルの生協へと発展した。
  4. (4)2007年に日常的な業務執行における責任者として、職員やワーカーズのトップである常勤理事を設置した。

4.組織運営上の成果と課題

  1. (1)約40人の理事が組織の最大の財産。専任理事も任期制とし、新たなリーダーを生み出している。

5.経営の課題

  1. (1)ブロック単協間に経営力量の差があり、東京への業務委託費率に大きな格差がある。
  2. (2)法人の分割に伴い人件費はかなりのコスト増となっている。

6.全体としてのまとめと今後

  1. (1)組合員の経営関与や責任をことさら主張するよりも、市民的専門性を発揮し、事業と運動の活性化に寄与することが組合員の参加のあり方ではないか。
  2. (2)生協の「地域化」は、共同購入を接点とする人々の関係性を地域でつなぎ、必要な事業や運動をつくりだしていくこと。
  3. (3)分権化はコストがかかるが、組合員が生協への所有感を持て、地域コミュニティを創設するコストと考えると納得がいく。

7.報告を受けて、以下のような質疑・意見交換があった。

  1. ①組合員参加の成果はリーダー形成。事業への貢献はほとんどない。
  2. ②組合員が市民としての常識(市民的専門性)を持って運営に関われば、バランスが取れ、成長できる。
  3. ③地域に開かれていない共同購入事業の場合、地域の問題を生協にもってこないと地域化しない。
  4. ④一番の課題は高齢化。一人暮らしとなった団塊世代が継続利用してくれるか。経済力のない団塊ジュニアの購入先の選択肢に入れるかが問題。
  5. ⑤仕事を持つ女性は子育て期間だけ生活クラブに関わり、仕事に戻っていく。仕事に戻らない組合員が理事を担うようになる。