研究活動

公益財団法人生協総合研究所 2024年度第4回公開研究会
現役世代の孤独・孤立の実態と今後の社会のゆくえ

○ 開催日時
2024年10月3日(木)14:00~17:00
○ 開催会場
来場・オンライン配信併用
○ 参 加 者
115名(来場12名、オンライン103名)
※オンデマンド配信視聴申込は72名 総計187名

プログラムと報告者(敬称略)

講演①「現役世代の人づきあい~『人々のつながりの実態把握に関する調査』から~」
石田光規(早稲田大学文学学術院 文化構想学部教授)
講演②「ひとり社会の自由と孤独~増加する東京ミドル期シングルの実態から~」
宮本みち子(放送大学/千葉大学名誉教授)
コメント「孤独・孤立の問題に生協はどのように対応できるのか」
前田昌宏(日本生活協同組合連合会 社会・地域活動推進部)

概要

<研究会の主な内容>

講演① 「現役世代の人づきあい~『人々のつながりの実態把握に関する調査』から~」

石田光規 氏

 石田光規氏(早稲田大学文学学術院 文化構想学部 教授)からは、2023年3月に生協総合研究所が実施した「人々のつながりの実態把握に関するアンケート調査」の結果をもとに、現役世代の人づきあいの実態と、その世代特有の課題、将来の展望等についてお話いただいた。
 調査の結果、現役世代の日常的な人づきあいは乏しく、孤独感も高い傾向があり、金銭的な援助やケアの援助など何らかのサポートが必要になった際に、頼れる相手が家族に偏っていることなどが示された。その上で、昨今、「生涯未婚」が激増していることを考えると、近い将来、未婚者が高齢化する時代が到来し、家族からのサポートを受けられない人々が多く出てくるのではないかという将来予測が示された。
 本報告の最後には、このような将来予測に基づき、孤立死のリスクや、医療・福祉の専門職不足が差し迫った社会課題として認識されるべきであるとの指摘がなされたほか、家族以外の形で、現役世代を包摂し、孤独感を軽減する方法を積極的に考えていくべきであるという指摘がなされた。

講演② 「ひとり社会の自由と孤独~増加する東京ミドル期シングルの実態から~」

宮本みち子 氏

 宮本みち子氏(放送大学/千葉大学 名誉教授)からは、2024年4月に刊行された『東京ミドル期シングルの衝撃:「ひとり」社会のゆくえ』(宮本みち子・大江守之編著、丸山洋平・松本奈何・酒井計史著、東洋経済新報社)の内容をもとに、「ミドル期(35~64歳)」の「シングル(ひとり暮らし)」の孤独・孤立についてお話いただいた。
 近年、高齢期シングルが増加していることはよく知られており、それらの人々を支えるための行政サービスも整備されつつある。一方、ミドル期シングルの増加についてはあまり知られていないが、実際には、この40年間で約10倍に増加しており、特に東京23区で著しく増加している。ミドル期シングルは、2020年の時点で東京23区の人口の3割近くを占めており、今後も上昇が続くと予測されている。
 これらの予測を踏まえて、宮本氏からは、ミドル期シングルは属性的に問題の少ない層だと認識され、これまで行政もほとんど関心を示してこなかったが、これらの人々が高齢期に達した時に備えて、未婚・離婚シングルの貧困や孤立を防ぐための政策を検討すべきではないかという問題提起がなされた。

コメント「孤独・孤立の問題に生協はどのように対応できるのか」

前田昌宏 氏

 前田昌宏氏(日本生活協同組合連合会 社会・地域活動推進部)には、2つの講演に対する所感をお話いただいた後、孤独・孤立を防ぐことを目的に、これまでに生協が行ってきた取組みと、今後の取組みの方向性についてご報告いただいた。
 具体的には、生協が孤独・孤立を防ぐことを目的に行ってきた活動として、フードバンクや生活相談事業、子育てひろばや子ども食堂などがあることをご紹介いただいたほか、生協の事業インフラや活動インフラを、地域インフラとして活用することで、地域の人々の社会関係資本の醸成に寄与している事例をご紹介いただいた。
 その上で、今後の取組みの方向性として、内閣府が行う「つながりサポーター」養成講座のように専門職ではない市民・組合員が周囲をサポートするための学びを推進するほか、DXを活用した多様な人々のつながりづくりや、多世代型の居場所づくり、地域の見守り体制の強化などにも力を入れることで、生協が孤独・孤立問題の解決に資することができるのではないかという展望をお話いただいた。

 なお、2つ講演とコメントに対しては、それぞれ質疑応答が行われた。質疑応答では、実参加とオンラインの参加者の双方から活発な質問や意見が寄せられた。

*講演、コメント、質疑応答の内容については『生活協同組合研究』2025年3月号に講演録を掲載予定です。関心のある方は、そちらをご覧ください。