研究活動
公益財団法人生協総合研究所 2024年度第1回公開研究会
健康寿命の延伸のために
- ○ 開催日時
- 2024年6月4日(火)14:00~16:30
- ○ 開催会場
- 来場・オンライン配信併用
- ○ 参 加 者
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86名(来場5名、オンライン81名)
※ オンデマンド配信視聴申込は33名 総計119名
プログラムと報告者(敬称略)
- 講演
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「地域で取り組むフレイル予防 ~元気なまちを自分たちの力で~」
飯島勝矢(東京大学 高齢社会総合研究機構 機構長、未来ビジョン研究センター 教授) - 講演
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「食生活によるフレイル対策」
本川佳子(東京都健康長寿医療センター研究所 自立促進と精神保健研究チーム 研究員)
概要
1. 講演「地域で取り組むフレイル予防~元気なまちを自分たちの力で~」
はじめに飯島勝矢氏(東京大学 高齢社会総合研究機構 機構長 未来ビジョン研究センター 教授)は単なる「健康長寿」よりも「幸福長寿」を目指すべきと語った。
フレイル(虚弱)とは、加齢により体力や気力が弱まっている状態であるが、まだ戻せるということを強調した。サルコペニア、オーラルフレイルについても触れた。またフレイル予防の三本柱として、「栄養(食事・口腔機能)」「身体活動(生活活動・運動など)」「社会参加(社会活動・地域交流など)」が重要であると述べた。特に「社会参加」について、「人とのつながり」が重要であることを自立高齢者に対する悉皆調査に基づく研究報告をふまえて述べた。
最後に「自分たちのまちは、自分達で守る、創る」という住民パワーへの信頼、産官学民が協働した健康長寿のまちづくりと、フレイルサポーターの取り組みについて紹介した。
2.講演「食生活によるフレイル対策」
本川佳子氏(東京都健康長寿医療センター研究所 研究員)は高齢者がフレイルになる流れ(疾病、不活発な生活習慣⇒口腔機能の低下⇒要介護状態)を説明したうえで、高齢者のフレイル予防における食事の重要性について述べた。特に70歳前後に「メタボ(生活習慣病)予防」から「フレイル(サルコペニア)予防」に食事における栄養管理のポイントを「ギアチェンジ」する必要があると強調した。70歳前後からは「やせ」よりも「小太り」が望ましいという研究結果を紹介し、フレイル対策としてタンパク質をはじめ多様な食品摂取によって「栄養」をしっかり取ること、そのためにも「口腔機能の維持」が重要であると述べた。
具体的な事例として「食品摂取多様性スコア」(①肉、②魚、③卵、④大豆、⑤乳製品、⑥緑黄色野菜、⑦海藻類、⑧いも類、⑨果物類、⑩油脂類)を紹介し、たんぱく質やミネラル類の摂取が多くなるような食生活が望ましいと強調した。
3.参加者の声
【飯島氏講演について】
- コロナ禍において高齢者を訪問した際に顕著に不活発化になっている方が多く見受けられました。そこで行政の健康診断にフレイルの項目追加を要望していましたが、最近17項目が追加されました。そのデータを活用して改善する方法はないかと考えてきましたが、飯島先生の取り組まれている「フレイルサポーター」の実践は良いと思いました。(生協職員・50代)
- 地域でのフレイル予防の取組みについて大変参考になった。フレイルに関する認知度が増えてきているが、高齢者に自分事として捉えてもらうためには、明確な根拠を提示して興味・関心を持って意識を変えてもらうことが重要である。地域でサポーターを通じて参加者がお互い励ましあいながら、活動するモデルを提示いただいたので、自分の組織でも研究をおこないフレイルサポーター、地域の拠点づくりの取り組みを進めていきたい。(生協職員・40代)
【本川氏講演について】
- フレイル予防にあたって、食生活の大切さを再認識しました。これまでは、「健康と食生活」といえば、生活習慣病予防が中心テーマでしたが、高齢層に対しては、「しっかり食べる」ことで、健康寿命を延ばしていくことの重要性を、生協の事業や活動を通じて、訴えていくことが重要だと思いました。(生協職員・60代)
- 口腔ケアの重要性、年齢とともに変化する適正なBMI値、筋肉量とフレイルの相関等について紹介いただき、大変参考になった。まだ高齢者が認識していない知識を広めて、食生活の提案をおこなうことが重要だと感じた。自分の組織でも食に関する学習からフレイル予防を啓蒙していきたい。(生協職員・40代)