公益財団法人生協総合研究所 2017年度第3回公開研究会
これからの家計簿 ~手書きの良さとアプリの良さ~
- ○ 開催日時
- 2017年7月7日(金)14:00~16:30
- ○ 開催会場
- 主婦会館プラザエフ5階会議室
- ○ 参加者
- 60名
プログラムと報告者
- 講演①
- 「全国生計費調査の結果より」
宮﨑達郎(公益財団法人 生協総合研究所) - 講演②
- 「家計簿記帳の生活創造効果と新しい方法論」
上村協子(東京家政学院大学教授) - 講演③
- 「ほぺたんポータルアプリ開発秘話
~組合員さんのニーズをどう表現するか~」
髙橋佑(コープデリ連合会 インターネット事業部) - 講演④
- 「『家計・くらしの調査』(2018年開始)の概要」
三谷和央(日本生協連政策企画部)
概要
くらしの経済をみつめ、生きる上での収支のやりくりを計画するための必須データとなる家計管理システムを、どのように記録し作成するのかは大きな課題です。長らく生協の家計簿を使用した活動が各地で行われてきましたが、若年層が参加しにくいという問題がありました。今回の公開研究会は、若い世代に急速に普及する家計管理のアプリは手書きの家計簿に替わることができるのか、どのように使えるのか、危険性はあるのか等を検討し、くらしを改善する家計簿また家計(生計費)管理のあり方を考える機会にしたいと企画しました。
まず、現在、日本生協連へ提出いただいている「全国生計費調査」の2016年の結果からみえること、そしてこれまでの生計費調査活動が果たしてきた役割を宮崎研究員が解説しました。そのなかで、現在、大学教育費が家計に大きな負担となる構造があり、幼少期から教育費を意識した家計管理が必要であること、家計簿をつけていることは、特に子どものいる若い世代にとって重要な自衛ツールであることを指摘しました。
つづいて上村氏より、若年層が身につけるべき金融リテラシーをどう考えるのか、政府側や消費者側から刷り合わせが必要であるという視点をいただきました。若年層の経済状況はかなり逼迫しており、その状況を改善するために「家計管理」は大変有益であること、そして若年層の「家計管理」ツールとしてアプリ以外には考えられないだろうとのご指摘もいただきました。
高橋氏からは、実際のアプリ画面を見ながら、使い勝手やアプリに対する組合員の声などを伺いました。コープみらいの「ほぺたんポータルアプリ」はすでに5.5万人に利用されており、数の上では、紙の家計簿を凌いで定着しつつあります。冷蔵庫の食材を管理したり、残り物を利用したレシピを提供する機能も発案されているそうです。これらの機能は、組合員の声をもとに、双方向コミュニケーションから改善がなされていくというプロセスを経て成り立っており、昔は夢物語であった、組合員との直接的双方向コミュニケーションが実現しつつあることが感動をもって理解できました。またトータルにくらしをみていく基盤にもなり得ることも予感しました。アプリケーション開発担当である高橋氏のお話は、これまでフェイスtoフェイスでしか成り立たなかった組合員との対話が、インターネットを通じて多数の組合員と直積的にできることが可能な時代の到来を予感させる、たいへん刺激的なものでした。
最後に2017年末で終了となる「全国生計費調査」に替わって、2018年よりスタートする日本生協連の新しい家計調査「家計・くらしの調査」企画の紹介があり、多くの世代にご参加いただける企画であるとの期待が膨らみました。