研究活動

生協総合研究所 「研究員講座」第5回を開催しました。

○ 開催日時:
2016年3月22日(火)
○ 開催会場:
プラザエフ5階会議室
○ 参加人数:
26人
講師とテーマ

 「社会統計論 II 」 近本聡子、宮﨑達郎(生協総合研究所)

概要

 研究員講座の2015年度最終回となる第5回「社会統計論 II 」は2部構成で、前半は近本研究員から社会調査の考え方について、後半は宮﨑研究員から表明選好法と顕示選好法についてのレクチャーがあり、その後質疑応答が行われた。

  1. 社会調査の考え方 あなたは誰に何をきくのか?
     社会調査は人とのコミュニケーションであるとの捉え方がベースとなる。測定可能性・統計的な有意性・論理的整合性などにより科学性が確保される必要がある。昨今、プライバシー意識の高まりなどにより調査は困難になりつつある。一般の自記式調査の回収率は3割程度。「全国生協組合員意識調査」では、調査票に図書カードを同封し、予告や督促をするなどにより、7割弱の回収率を得ている。
     調査においては、母集団に含まれる人々のリストと、代表性があり必要数を満たすサンプルが不可欠。サンプリングを経ない“ばらまきアンケート”は何も代表しない。また、分析に用いるクラスターのサンプル数が20以下になると代表性を欠く。
     的確な調査のためには、先行研究などを踏まえた適切な設計も重要。
  2. 表明選好法と顕示選好法 ──アンケートと購買履歴の違い──
     表明選好法はアンケート調査が主で、人の表明に基づいて価値を測る。顕示選好法は購買履歴データなどで、実際の経済活動に基づいて価値を測る。
     表明選好法(≒アンケート調査)はあくまで仮想なので、現実と乖離した結果が出がちだが、顕示選好データがない場合には利用せざるをえない。よって、関連する顕示選好データを踏まえ、できるだけ現実の場面に近く、回答者が自然に選択できるような設問をつくる。結果を鵜呑みにしない。想定される偏りの方向性を捉えておく。
     アンケート調査の利点は、データ量が少なく分析が簡単。調査者が自由に設問を設定できる。現実にはない仮想の商品についての評価を求めることができる。経年変化のトレンドや年齢の影響などは見ることができる。(生協総研 松田千恵)