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研究活動

学習会 ― 生協総研憲法改定問題連続学習会 第1回開催報告 ―

概要

 2013年5月25日(土)、阪口正二郎氏(一橋大学大学院法学研究科教授)をお招きし、「自民党の日本国憲法改正草案について考える―96条改正問題を中心に―」と題して、自民党憲法改正草案が目指す方向性、憲法96条の改正を中心にお話いただきました。

 日本生協連、会員生協、生協総研から24名が出席し、講演後に質疑応答を行い終了しました。

1.開催概要

■日時:
2013年5月25日(土) 13:00~15:00
■場所:
主婦会館プラザエフ 5階第1会議室
■講師:
阪口 正二郎氏(一橋大学大学院法学研究科教授)
■参加人数:
24人(日本生協連、会員生協、生協総研)
2.内容

 阪口先生の講演では、はじめに自民党憲法改正草案(以下、改正草案)はある種の訣別宣言であるという視点から、以下の点を中心に改正の狙いについてお話しいただきました。

  • 「個人主義からの訣別」:改正草案では13条の「個人」の尊重を「人」の尊重に変えている。個人とは多様で異質なもので、現行憲法はそれを丸ごと保障している。一方「人」はみな同じ「人」。同じような「人」を尊重する、というように考え方が変えられる。
  • 「国家と個人の関係に関するこれまでの考え方との訣別」:国民が、大きな力を持つ国家を縛るのが憲法であるが、改正草案では、国家が国民を縛るものとなっている。人が人であるというだけで有する「基本的人権」ではなく、歴史や伝統を重んじる日本人の権利を重視している。
  • 「普遍性からの訣別」:明治の大日本帝国憲法を作った人たちは、非常に苦労して西欧思想を採り入れようとしたが、改正草案はそれさえ放棄している。また、多くの国家が西欧流の基本的人権を採用し世界中に大きく広まっている中、世界の流れに逆行している。
  • 「9条改正について」:改正草案で目指しているのは集団的自衛権の容認である。集団的自衛権の行使は現行の憲法では認められない、というのが内閣法制局の見解であり、これを乗り越えるために9条を改正したいということである。

 次に、憲法96条改正についてお話いただきました。日本国憲法は、①改正には国民投票が必要、②改正の発議には各議院の総議員の3分の2以上の賛成が必要であり、一般の法律と同等の手続では改正できないことから硬性憲法であること、また、自民党改正草案では、②を各議員の総議員の2分の1以上の賛成、に緩和しようとするものであることをご説明いただきました。その上で、日本国憲法が硬性憲法であることの肝は②の要件にこそある、立憲主義を可能にするためには、多数者によっても侵害されてはならないものとしての人権があり、その意味で硬性憲法=(単純)多数決では変えられない憲法が重要、とのことでした。

 最後に、阪口先生から、憲法は「不磨の大典」ではないし、またそうあるべきでもない。ただし、現在の改憲動向には問題がありすぎる、というお話がありました。

 質疑応答では、参加者から、「国民投票について考えを聞かせていただきたい」「加憲の議論についてどのように考えればよいのか」「改正草案がそのまま実現したとして、誰がどのように得をするのか」等の質問が出されました。

資料のダウンロードはこちら(PDF 278KB)