生協総合研究所とは
設立趣意書
70年代以降、日本の生協運動は急速な発展を遂げてきました。1975年当時日本生協連加盟の生協の組合員数は 500万人でしたが、13年後の1988年に、ついに組合員数は、 1,200万人を突破しました。拡大・発展にともなって社会的な影響力も強まり、いまや生協は国民生活に欠かすことの出来ない存在となっています。
いま、生協運動と国民生活をとりまく現状に目を向けると、生活のあらゆる分野で、生産力はかつてなく増大し、消費財が市場に氾濫している中で、くらしの質、生活の本当の豊かさとは何かが問いなおされています。そして消費者問題、食糧・農業問題、環境問題、福祉問題など国民のくらしに直結した諸問題を解決していく上で、生協の役割とは何かということも問いかけられています。
特に、国内外の経済・流通動向と生協事業の関わり、国民生活と消費者をめぐる諸問題、国内外の協同組合の歴史と理論、21世紀へ向けての生協のあり方などは解明されるべき重要な研究課題であり、また拡大発展した生協の地域社会における位置と役割などについても今後明らかにしていくことがもとめられています。
日本生協連は、すでにこれまで、各地の会員生協、各分野の研究者、諸研究機関の協力を得て、国民生活と生協に関わる個別の諸問題を取上げ、調査研究を行ってきました。しかし、生協運動が大きな発展を遂げ、その社会的存在が重要な位置を占めるに至った今日、個別の調査研究のみならず、くらしと生協についての恒常的、体系的、総合的な調査・研究活動を活発に行い、当面する諸問題を解明し、その成果を普及していくことが必要とされています。
また、急速な拡大発展に対応し、生協運動を担う人材の育成や、生協事業について広く啓発し、社会的理解を得ることなど強く望まれており、その面での教育・研修・交流の場を積極的につくることが期待されています。
そのために、日本生協連からの3億円の基本財産の寄付を基礎に、会員による協力を得ながら、ここに財団法人の設立を決意しました。
この研究所は、広く協同組合運動、生協運動に関心を有する経済・社会・政治・法律・文化・自然科学にかかわる研究者そして実践家を結集し、今日の国民生活と生協に関する諸問題の調査研究とその成果を啓発・普及することを推進するものです。
とりわけ、国民生活、地域社会について、理論と実践を統一した調査・研究活動を行い、社会的政策要求に応え、広く会員からの調査・研究ニーズ、委託調査、講師紹介、資料照会などの要求に応えていける研究所づくりをすすめます。また、会員の研究機関・研究会や協同組合に関する国内・国外の研究機関、関連するシンクタンクなどとのネットワーキングをすすめていきます。さらに、生協に関わる人々への教育・研修活動にも助成ないし貢献できることをめざしていきます。
こうした性格と役割を有する研究所は、必ずや、国民生活と生活文化の向上に寄与するものと確信します。
以上をもって、財団法人生協総合研究所の設立趣旨とします。
1989年8月1日
発起人 大内 力(代表) 野尻 武敏 正田 彬
宮坂 富之助 高村 勣 福山 雅夫