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刊行物情報

生活協同組合研究 2012年1月号 Vol.432

特集:東日本大震災と生協の役割

 今回の特集は,昨年10月8日に開催した生協総研の年中行事「全国研究集会」の討議録で構成している。

 研究集会は,本特集タイトルの通りテーマを「東日本大震災と生協の役割」と設定した。3月11日以後,約8カ月間の全国生協の震災対応を振り返って確認しつつ,主に流通システムと地域づくりの切り口から,今後の課題の所在を探ってみるという趣旨であった。本特集では組み立てを含め,ほぼ当日の討議の再現になっているので,ここで屋上に屋を架す余計な説明は避け,さっそく本篇をご覧いただきたい。

 数点のみ,私見によりキーワードを抜き出して導入とする。

 一つは,地域再建や産業復興に向けた広い意味のコミュニティ形成である。あるいは,みやぎ生協の宮本弘専務理事が紹介された「食のみやぎ復興ネットワーク」や,玄田有史教授が提起された「ウィーク・タイズ」(ゆるやかなつながりの集まり)である。硬直的なものでなく,新たな展開の芽も含んだ,幅の広い参加によるコミュニティや,ネットワーク,紐帯が,復興プロセスのいたるところにゆるやかに張り巡らされ,組み合わさっていく姿が,今回の討議全体を通じて浮かんできたように思える。

 産業復興に関連して,食品や土壌や海洋の放射能汚染についても,今後は国民参加による検討や対処が求められてくる。後段の「本誌特集を読んで」の欄で,ちばコープの中秀夫・杉森一雄両氏に報告していただいた事例が生協としての考え方の一例であるが,この問題にはもちろん様々な要因,判断,配慮がともなってくる。本研究集会で,放射線医学総合研究所の明石真言氏に一つのオーソドックスで基礎的な説明を示していただいたことをまず入り口とし,論議の場を設けていきたい。

 もう一つ,基本的な点であるが,生協とは地域の中でどのような事業体なのかということである。一方ではもちろん,直接的にメンバー加入を前提としつつも潜在的には不特定の多数者を顧客として念頭におきながら購買事業を展開し,剰余を生み出していく事業体である。もう一方で,地域に根を張る組織であり,住民と一体となった社会的・公益的事業の担い手であり,地域活動の受け皿でもある。

 パネル討論の中で,日本生協連の矢野和博専務理事が「永遠の矛盾」と形容されたくだりや,大阪いずみ市民生協の藤井克裕理事長が社会貢献をするにもまずは経営・財務をしっかりすることが前提である,とされた発言ともかかわって,生協の公益性とは何かという点が今後の理論的・実証的な研究課題として浮かび上がっている。

 生協に,どのような復興計画への提言や参画が可能なのか。あるいはどのような流通や地域計画のネットワーク形成を担っていけるのか。国際連合が「国際協同組合年」と宣言した本年は,震災復興への行程を本格的に描いていかなければならない年でもあり,生協総研でも本年の中心課題と考えて取り組んで行く。今年の9月に予定している次の全国研究集会での論議に向けて,調査研究を進めていく計画である。

(林 薫平)

主な執筆者:生源寺眞一,玄田有史,木立真直,明石真言,矢野和博,宮本 弘,藤井克裕,大沢真理,芳賀唯史

目次

巻頭言
農業だけの問題か(生源寺眞一)
特集 東日本大震災と生協の役割
開会挨拶(生源寺眞一)
震災と復興の希望学(玄田有史)
震災後の流通・サプライチェーンの再生──贈与の流通論の視点を交えて──(木立真直)
原発事故に伴う放射性物質による食品汚染と健康影響(明石真言)
東日本大震災への生協の対応(矢野和博・宮本 弘・藤井克裕)
パネル討論 流通・社会インフラの形成と危機に強い地域づくりに向けて(大沢真理・木立真直・矢野和博・宮本 弘・藤井克裕・芳賀唯史)
海外のくらしと協同No.30
国連による国際協同組合年開始宣言とニューヨーク社会から感じられるもの(堀内聡子)
残しておきたい協同のことば 第10回
M.L. デーヴィス(鈴木 岳)
本誌特集を読んで
研究所日誌