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刊行物情報

生活協同組合研究 2011年11月号 Vol.430

特集:大震災後の食と農

 3月11日の大震災は,東北を中心に,関東・北海道も含む広範囲におよび,一次産業への甚大な損害をもたらした。一次産業を担っていた多くの人びとの生命や財産だけでなく,農地や農業設備,漁業設備,食品の保存・加工施設が損害をこうむり,加えて,原発事故によって拡散した放射性物質の影響は測ることができないほどの規模におよんでいる。本号では,一次産業・食品関連産業の再建を軸においた震災復興を念頭に,4篇を編んだ。

 一次産業・食品関連産業の再建を考える場合に注意を要するのは,結局,商品が売れなければ始まらない点である。ところが,もともと米作を中心としてきた東北農業では,米消費の減少から米価下落が続いていることにより経営は悪化の一途をたどり,米の単作につきまとう閉塞感をどう打開するかが長らく課題とされてきた。環境保全型農業へのチャレンジや,加工や消費者との連携に向けてどのように幅を広げていくかが議論されてきた。したがって東北の今後の復興に向けた課題は,ずっと論じられてきた課題とも重なり合う面をもつ。

 本特集冒頭で,池戸重信教授は,農業と漁業の復興だけでは東北経済全体の復興には足りないとし,地場の一次産品を加工する食品産業の復興までを描いている。米についても,主食用米として売るだけよりは,米の他用途を幅広く追求する「米コンビナート」のような考え方を強調される。同様の見地から,消費者ニーズの把握や,生協などの小売業との連携を提言されている。生協が事務局を務め,約150の団体・企業や個人が参加する「食のみやぎ復興ネットワーク」は興味深い実践である。

 次いで,吉田俊幸教授から,米と水田についての政策課題の解説である。米をめぐっては長らく生産過剰の状態にあり,放射性物質の拡散による不作付があっても米過剰基調には変わりがないとする。「新規需要米制度」の開始など,農政も様々な試みを行っているが,簡単ではない。次の大澤信一氏は,食品加工や,レストランや直売所や観光などを含め,地域の特性にあった地域主体の経済再建の道筋をスケッチしている。このような多様な方法を模索する中で,改めて東北の農業・漁業の魅力を確認されている。

 最後に,工藤昭彦教授は,従来提起されていた農地信託会社の発想が,水田農業の再建を考える上で有効とされる。地権者の土地を,合意に基づいて集約し,条件を付して農用地として貸し出すものである。教授は,震災後,この話に興味を示すJAが増えたと言われ,さらにこの取り組みを,上から強行される特区制導入と似て非なる「参加型」の取り組みと位置付けられている。震災復興を考える際に,地元発でかつ大胆な発想が必要であるとする視点は,大澤氏と共通している。ここのところは,水産業の復興を考える際に極めてセンシティブな論点となるが,別の機会に実証的に取り上げることとし,以上4篇を読者に供する次第である。

(林 薫平)

主な執筆者:池戸重信,吉田俊幸,大澤信一,工藤昭彦

目次

巻頭言
総括原価方式(麻生 幸)
特集 大震災後の食と農
東北の一次産業・食品産業復興に向けた展望について(池戸重信)
今後の米需給と米・水田農業政策の課題(吉田俊幸)
東日本大震災と東北農業復興への展望(大澤信一)
参加・棲み分け型農業・農村改革による震災復興の道筋(工藤昭彦)
研究と調査
行政との協働をめぐる,イタリア非営利セクターの現状と課題(田中夏子)
震災と復興を考える(第7回)
賀川豊彦と関東大震災復興の掛け軸(加山久夫)
海外のくらしと協同No.28
ヨーロッパ生協のいろいろ(久世留美子)
残しておきたい協同のことば 第8回
エドゥアール・アンセール(鈴木 岳)
本誌特集を読んで
新刊紹介
原山浩介著『消費者の戦後史』(井内智子)
研究所日誌