ファミリーサポート研究会
 

2006年3月〜 研究統括 近本 聡子

◆研究目的

 日本においては子育て関連のGDPに対する支出比率はがまだまだ少ない。また、子育て支援はもっぱら少子化対策として行われており、子どもの発達の権利を保障するという視点も希薄である。しかし、各地に投入され始めた子育て支援資金が、活動を活性化させ、親たちのサークルのネットワークや支援NPOなどが多く出現してきている。また、それらの活動が「地域発展」に繋がるケースもみられる。生協組合員の活動も薄いながらも行われており、今後ファミリー・サポートの日常的な部分をどのように構築していくか、ということは日本の社会を発展的に形成していく鍵となってくる。

 先進国の事例や、アジアの諸国の模索を追求し、選択肢を多く紹介することで、地域エンパワーメントに繋がる可能性が大きい。(財)生協総合研究所の研究課題の重点としては、それら資料を収集し、提示する。できれば活動している市民(生協組合員を含む)にヒントを与え、活性化する方向で提案をおこなう。「非営利・協同組合ネットワークにおける、子育て支援事業の可能性」を追求する。

 また、介護保険関連とは異なり、まだ社会全体に必要な事業として確立していない分野であるが、活動団体の実際の損益比較などをして、どのような条件があれば、あるいは、今ある条件(社会資源)で「非営利・協同組合」セクターによるどのような子育て支援事業が可能なのかを研究する。

◆経緯

 平成15〜16年調査が「非営利・協同組合ネットワークの子育て支援のあり方に関する国際比較〜カナダと日本をみるー」で、カナダの子育て支援について詳細に紹介し、地域発展をトータルに行う一つのプロセスとして子ども達だけでなく親のリソースを豊富にしていく方法をみた。ファミリー・リソースセンターの財務状況などは一部紹介したが、次回の研究では、他の国も視野に入れ、日本で応用可能性をみていくのはどうか。


福川須美 本研究会座長 駒沢女子短期大学教授
 
永田陽子 北区育ち愛ほっと館カウンセラー
駒沢女子大学非常勤講師
 
斉藤進 日本子ども家庭総合研究所母子保健研究部主任研究員
 
相馬直子 日本学術振興会(日本女子大)
 
赤井美智子 十文字学園女子大学教授
 
加藤雅代

ちばコープ くらしづくりサポート推進室
次世代支援担当
 

渡部典子 日本生協連組合員活動部




第1回
2006/3/15
研究会のテーマを設定するために、自己紹介をかねてメンバーのこれまでの研究の経緯を報告いただき、テーマの方向を探った。多領域からの参加を図ったので、ターミノロジーにやはりすり合わせが必要であることが認識され、次回課題となった。
第2回
2006/5/10
報告者:加藤雅代(ちばコープ)
 
「生協の子育てひろば事例報告と検討」
 
ちばコープは各地の生協に先駆けて千葉市の「つどいのひろば事業(厚生労働省交付)」を競合プレゼンテーションで引き受け、毎年1つづつ拡大、現在3つの「子育てリラックス館」を運営している。その経緯とスタッフ募集、ひろばでの親子の様子、などプレゼンテーションしていただいた。
第3回
2006/6/28
報告者:赤井美智子(十文字学園女子大)
 
「新座の子育てネットワーク NPOと行政の事例報告と検討」
 
坂本純子氏を代表とする新座子育てネットワークは新座市はもちろん、県をとびこえ厚生労働省や文部科学省とネットワークをもつようになっている。新座市はあたらしいプロジェクトの提案があるたびに、NPO案にとびつくようにお金を出してきたが、常に対等関係を保つよう努力している。
第4回
2006/7/28
報告者:福川須美 近本聡子 相馬直子
 
カナダのリサーチと文献
 
1.Case Studies にみるカナダの子育てネットワーク
 文献から、コーポレイションからコラボレーションまでの[共同]のありかたの定義をみて、ネットワーク形成の様態あるいはレベルについて事例をみながら討議。

2.EYET Toronto の事例
 トロント市のEast York地域を基盤としてスクールや教会と連携して、ファミリーサポートを行っているEYETについて事例報告。

第5回
2006/9/6
報告者:斉藤進(日本子ども家庭総合研究所母子保健研究部主任研究員)
 
『子育てネットワークの効果測定 試論』
 
質問紙調査で重要になる指標を紹介してもらった。
調査票自体の検討が必要。あげられていない指標については、今後調査を重ねる必要がある。
第6回
2006/10/4
報告者:永田陽子 臨床心理士
 
『「人育ち唄」の子育て支援への導入』
 
日本では人を育てることにぴったりな技術として、わらべうたが機能していた。
遠野の事例をみてみると、「五感を育てる」ことを基本として見守りや見つめあいなど、心理学の発達理論とまったく同じプロセスを見通して数百年も伝承されてきたことがわかる。これこそが、支援の基盤となるだろうと考える。
非常に理論的にもすぐれた研究と考えられるので、生協のひろばにぜひ応用していただきたい。
第7回
2006/11/29
1.「人育ち唄」の子育て支援側面と出版停止(永田陽子)
 
第6回研究会で、遠野わらべうたを研究しながら、これこそが支援の基盤となるだろうという論を展開した。しかし11月に出版したところ、肝心の遠野の中心メンバーが楽譜の採録に対して感情的に怒り、出版停止に追い込まれた。
ちばコープではすでに、非常にすぐれた素材と考えて、生協のひろばに応用すべく準備しているだけに、なんとかならないかと永田氏を励ます。

2.ちばコープの課題(加藤雅代)
 
子育て担当のコーディネーターが、組合員スタッフというポジションしかあたえられず、時給も非常に安い。研修や対外交渉はいかせてもらえるが、生協のなかで所詮ポジションは低いという悩み。これはジェンダー課題と共通するが、日本の子育て後の女性のエンパワーができていないこと、生協は半ペイドワークを徹底させていること、などがうきぼりになった。

第8回
2006/12/25
1.相馬直子:子育て支援政策と動向の日韓比較
 
韓国では教育ブームが高まり、教育環境を求めて、すぐれたと評判の地域では家賃が高騰するなど親子とも熱心である。しかし長年の一人っ子政策のあと、気付いてみれば日本よりも合計特殊出生率がさがってしまい、日本とともに超少子化社会が始まっている。日本では育児ストレスが高いが、韓国では子どもの将来展望の不安が高く、調査の数値はまったく異なるのがとても興味深かった。また、相馬氏の学会動向の分析も政策決定の上で重要であることが理解でき、学術動向と政策の力学を垣間見ることができた。

2.近本聡子:子育てニーズ調査の単純集計結果より
 
自分の子どもの世話をするまで、他の子どもの世話をしたことがないという人が40代前半より下の層で6割から7割を占める。育児スキルが完全に断絶し、親になったとたんマタニティ雑誌で最新のスキルを学ぶ親たちの実態が明らかになった。親準備期間とスキルの学習が必要であることを切に感じるデータである。この調査票は、大阪レポ・兵庫レポで著名な原田正文氏のものを援用している。

第9回
2007/2/7
報告者:小原聖子 氏(ゆったりーの代表)
 
1.「ゆったり〜の」の設立と現在のネットワーキング
 
新宿区の山伏町の廃園となった保育所を、市民たちの力で「子育て支援施設」として生まれ変わらせたグループ「ゆったりーの」の代表、小原さんから、廃園にともなって区に要望を出したところから、ワークショップの開催、区長が女性なので乗ってきてくれた、助成を受けて、つどいの広場開設という経緯と、現在の課題を、スライド付で紹介。
 
彼女自身が保育園利用をしていたフルタイムホワイトカラーであったが、このひろばにかかわって退職、支援を本腰で始めたという経緯に研究者の注目が集まった。何か足りないものがあるとすぐに地域への応援要請ができるという、カナダ方式(意図されてないが)の運営を行っており、おもちゃライブラリやリサイクルコーナーもつくり、ちょっとひといきコーヒーコーナーなど、施設が広いのでたくさんのニーズに答えて支援をしている。
 
2.研究会のまとめに向けて
第10回
2007/3/26
報告者:福川須美氏 近本聡子 相馬直子氏

■研究報告を通じて共有化してきたこと

近年における地域における子育て支援活動の実践の蓄積
 ・子育てNPOの台頭 ・生協(サードセクター)による子育て支援活動
 ・行政との連携事例
 ・新しい雇用のあり方(特に女性)
  →地域におけるネットワークの広がり、地域コミュニティの再生の事例
    課題)活動の継続
 ・支援者、リーダーの育成
 ・行政の下請け化
 ・市民性の育成(専門家中心)
 ・資金面
 ・強い市民、女性が中心(階層・ジェンダー)
 ・「ネットワーク」の裏側での排除 支援者のワーク・ライフ・バランス
 本研究会での研究者間の問題関心は、一巡して分かりかけているのではないか?
 
■研究課題(案)
 
近年の子育て支援活動を通じて構築されている「ネットワーク」は、どのような広がりや深さをもっているのか?
→今後、コミュニティ開発に対する子育て支援活動の課題とは何なのか?
  なかでも、サードセクター・ボランタリーセクターの役割をどう考えるか?
第11回
2007/4/25
報告者:斎藤進氏 「子育てひろばの地域に及ぼす効果分析の指標をさぐる」

前回研究会での確認事項を踏まえ、新しい調査に向けて設計をはじめる。まず、調査設計に必要な「効果を示すキーワード」を既存調査から収集する作業を斎藤氏が分担した。

・子育てひろばの効果キーワード研究

加藤氏から「ちばコープリラックス館」で調査した利用感想・意見の自由記述、赤井先生から、新座子育てネットワークで実施した調査の結果、をテキストにし、解析ソフトで単語にばらして、頻度を数えた。キーワードから、調査のヒントができないかとチャレンジ。

「子ども」を通しての自己リラックスという視点が強い。子どもが楽しそうで自分も幸せという間接的な表現に繋がっている。「私がほっとする」とストレートには感想に出にくいようす。

・子ども未来財団の研究助成の件

「地域の子育て支援拠点の拡充に向けた運営・活動等に関する調査研究」で利用者調査をし、マニュアルや研修体系、父親支援などを盛り込む、という計画。利用者の変化(良かったことなど)を評価し、運営にいかせるインデックスの作成を目指す。
第12回
2007/6/4
子育てひろばの地域に及ぼす効果分析の指標案 by斉藤進

前回より続き各種のアンケートより指標となるキーワードから質問をワーディングこれについてメンバー全員の○×を集め、次回までに集計し指標をセレクトしていく

第14回
2007/08/20
ちばコープで実施したプレテストを素材に議論

子育てひろばの地域に及ぼす効果分析の調査票案をつくるためにプレテストを実施した

■ネットワーク効果調査の調査票案の修正改訂の討議
第15回
2007/09/14
「子育てひろばの地域に及ぼす効果分析の調査票案」
ネットワーク効果調査の企画案 バージョンアップ
福井県民生協子育て支援施設調査打合せ

■子育てひろばの地域に及ぼす効果分析の調査票指標を測定する調査票は、ちばコープひろばでプレテスト30人余りのデータを精査。また、フェイスシートについて、利用者自身の仕事の仕方や、ひろばへの参加の経験などを聞くことになった。ほぼ調査票は完成。その他依頼先への企画案などを討議して作成。

■ネットワーク効果調査の企画案
第16回
2007/10/15
-16
【福井調査】
「市町村の子育て支援と生協の子育てひろばの状況」
施設長ヒアリングを中心に

■敦賀市・福井市とも政策の目まぐるしい変化に困惑しているようす。

■福井県民生協は曜日別一時保育で事業の採算がとれるかどうか厳しいとのこと。

■施設長は保育士資格があるが保育所保育では満足できなくて新しい分野に関心。

■組合員活動としてのひろばも武生で誕生していたそうである(7年前)。
第17回
2007/11/16
・福井調査のリマインド 資料確認
・子育てひろば効果測定調査 進行状況確認と追加ひろばについて

今回は、(1)福井県地域調査のまとめ (2)ひろばのネットワーク効果調査の進行確認をおこなった。 (1)については前回の福井市 鯖江市 敦賀市 などヒアリング調査をリマインドし、各ヒアリングの報告書を出し合った。テープ起しも完成したので、これで補完していきたい。(2)については調査実施中で、各地のひろばでの進行状況と追加でお願いできるところの確認を行った。

○利用者調査実施中ひろば<対象>・ちばコープ ・福井県民生協のひろば ・新座子育てネット「せさみ」・エフコープ(08年1月)・江東区みずべ(08年) ・北区育ち愛ほっと館 ・きらきらクラブ ・武蔵野市0123はらっぱ ・びーのびーの ・手をつなご ・東久留米市子育て支援センター ・敦賀市子育て支援センター ・世田谷区全域のひろば など

現在回収数400通程度。世田谷区の調査票が400ほど今週戻る予定
第18回
2008/01/24
・データクリーニングのあらましと回答の傾向(近本)
・暫定データクリーニングの方法の検討と数値変数のカテゴライズの方法検討
・子育てひろば効果測定調査の測定項目の分布と因子分析(斉藤)

いよいよ調査データの第1段がまとまり、研究会では生データと調査票をみながら、回答ミスや無回答の多い項目などをみ、データクリーニングの方針を検討。たとえば、調査票の表記の不十分さから、第1子かどうか回答が得られない箇所などがあり、代替できる問いでの精査が必要となる。

また、数値変数のカテゴライズについて、幾つか案があり、トライしてみることで分類する方向となった。たとえば、子どもの月齢を何歳で区切っていくか、など。<調査票未回収のひろば>エフコープ(08年1月)・江東区みずべ(08年)・びーのびーの・AMIGOなどで、2月3週であと400くらいは回収する予定。

今回の調査データにより、斉藤進が試みに測定項目で因子分析を提示。「子育て肯定」指標・パートナー指標など5つの軸を析出した。サンプルが全てそろってから再度実施予定。
第19回
2008/02/27
・効果測定調査の回答者プロフィールとクロス集計(近本)
・子育てひろば効果測定調査の報告書執筆分担

いよいよ調査データの第1段がまとまり、執筆分担を行った。
<調査票未回収のひろば>エフコープ(08年1月)・江東区みずべ(08年)・びーのびーの・AMIGOなどで、2月中には回収する予定。

<報告書の分担テーマ>
1.調査概要と回答者のプロフィールとひろばのプロフィール 近本
 利用者の層の特徴と運営主体の多様性

2.ひろばに参加したことがどのような広がりにつながるか
 一部でも子育て支援に携わるというサイクルができてくるか 赤井

3.パートナーとの関連がひろば効果でどのように変化するのか 永田

4.効果の測定軸と方法論 斎藤

5.ひろばからどのように関心が広がっていくか 仕事地域よりよい子育て 相馬

6.常設ひろばと月1ひろばの比較 加藤

7.ちばコープとエフコープのひろばの比較 渡部

8.子育てひろばの効果と今後の課題 職業別にみるひろばの効果 福川

 データ集
第20回
2008/05/30
・子育てひろば効果測定調査の集計計画、分析計画、目次決め
・各自レジュメ報告

この1年取り組んだ「子育てひろばの効果測定」利用者調査について

○総研レポートで調査報告を行う締め切り 7/10くらい 各自執筆していただく予定  字数 8000字〜16000字(図表込み)

この日は各自報告書に執筆予定の概要と、使用データを披露した。行政の協力を多くいただいたので、その結果開示について、どのような配慮をするかを話し合った。許可があれば自治体名公開、県名市町村名は基本匿名。

○データの修正について必要なものを出し合う

第21回
2008/07/11
・子育てひろば効果測定調査の報告書について各自レジュメ報告

この1年取り組んだ「子育てひろばの効果測定」利用者調査について

○総研レポートで調査報告を行う〆切り 7/10 字数 8000字〜16000字(図表込み)であったが、半数以上の方は多忙につき、概要の報告となった。

○本日メインは座長の日本におけるファミリーサポートの経緯と発展(総論となる)

○相馬氏が世田谷区で報告された、レポート内容についての解説

○データの修正はいくつか誤謬があったが、直前に完成版ができあがった。

○8月20日頃を締め切りとして、9月末総研レポートにて発行予定。

 

BACK



copyright (C)2003 [Consumer Co-operative Institute of Japan] All rights reserved.