知の市場

第14回講義概要「貧困を考える」

○ 開催日時
2016年7月20日(水)15:00~16:30
○ 開催会場
大東文化大学 板橋キャンパス(高島平)
講師とテーマ

 上田 正(日本生協連)
 「貧困を考える」

概要

 全14回に渡って開催してきた生協社会論も最終講義となりました。

 今回は、日本生協連の上田正さんが「貧困を考える」というテーマで講義を行いました。

 現在、日本では格差の拡大や子どもの貧困が問題になっており、社会問題としてメディア等で採りあげられることも多くなっています。

 講義の冒頭、上田さんは「貧困とは」どういう状態を指すのかについて説明しました。貧乏であることに加え、他者との繋がりが断たれ孤立している状況が貧困だという、貧困ネットワークの元事務局長、湯浅誠さんの定義を紹介しました。

 その上で2014年に銚子市で起きた無理心中事件等を事例に挙げ、本当に援助が必要とされている人々に対して支援が行き届いてはない現代社会の貧困問題について考えてほしいと学生に伝えました。

 続いて、このような問題に対する生協の取り組みとして、生協による生活困窮者向けの生活再建相談と貸付事業が事例と共に紹介されました。日本各地に数多くの生協がありますが、貸付事業を行っている生協はまだ少数である一方、相談件数は年々増えているそうです。

 生活困窮者の増加は様々な理由が考えられますが、上田さんからは給与所得者の平均年収が下がっていること、格差拡大により中央値は更に低いことが説明されるとともに、家計の借入額が増加している件、計画性の無い借金によって生活が破綻する事例が説明されました。

 講義の最後に上田さんは以下の3点を強調しました。

  • 今日の貧困問題は個人の問題・自己責任の問題だけではない。
  • 今日の貧困問題は国や自治体の取組みだけでは限界がある。
  • 今日の貧困問題は自助・公助・共助(互助)の総合的な取組みが大切となっている。

 生活困窮については、自己責任だという意見も多くあります。一方で、些細なきっかけから誰もが貧困に陥る可能性のある社会となっているとの指摘もあります。今回の講義を受講生達はどのように受け止めたのでしょうか。