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刊行物情報

生活協同組合研究 2019年8月号 Vol.523

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「シェアリングエコノミー」を学ぶ

 本号の特集テーマは近年話題にのぼることの多い「シェアリングエコノミー」(以下、SEと表記)である。筆者はこの言葉にあまりなじみがなかったため、特集を組むにあたり、経済雑誌の記事や金融機関系研究所の出しているレポートに目を通し、この言葉がどのように扱われているかを確認した。「SEとは何か」を厳格に定義するのは難しく、大まかには個人の保有する遊休資産(モノ、空間、スキル等)をインターネット上の取引プラットフォームを利用し、それらの資産を利用したい個人が自らは所有することなく、必要な時だけ利用する経済活動といった説明が多く見られた。その過程で気になったのは「SEとはどのようなものか」についての質的な検討よりも、それを所与として、SEと呼ばれるビジネス業態の象徴的企業であるUber、Airbnbが急成長していることの紹介や「SEの市場規模はどのくらいの額に上ると試算されるか」といった情報、すなわち経済成長の新たな源としての期待が目立ったことだった。それらの情報ももちろん重要ではあるが、本特集では「期待感」をいったん横に置き、SEという事象について、これまでのところ判明していることを地道に学びたいと思った。

 そこでまず、現在の日本でSEがどのようなものとして理解されているのか、それに関わる政府や事業者の動き、今後私たちが留意すべき点等、日本版SEの基礎知識とも言うべき情報を市川論稿で端的に示して頂いた。それを足掛かりに、穂鷹論稿ではSEの先駆的存在とされるUberと、伝統的なシェア事業であるルドテークという対照的な事例を取り上げ、SEをめぐり、欧州(主にドイツ語圏)においてどのような議論がされているのかを紹介頂いた。また高田論稿では昨年、新法が施行された民泊を題材に、有休資産の活用が期待されていたにもかかわらず、そのような結果に必ずしもつながっていない現状を詳細に報告頂いた。さらに、山崎論稿ではSEのサービス提供に従事する労働者は構造的に弱い立場に置かれやすいこと、そのようなことを防ぐ仕組みを意識的に作る必要性を論じて頂いている。また鄭論稿では、自治体ぐるみでSEを推進しているソウル市の事例を取り上げ、コラムでは、日本のシェア事業の事例を取り上げた。

 本特集を通じて、SEと呼ばれる事象の、従来的なビジネスとの境界線のあいまいさと、そこから懸念される問題―大手事業者から零細の個人まで、あらゆるアクターによる経済活動が含まれ、その結果、提供されるサービスには通常のビジネスと大差ないものからささやかな共助の活動と呼べるもの(いわゆる商業経済と贈与経済)まで幅広く混在していること、そこで行われる活動を利用者と提供者はもちろん、社会全体にとっても有益なものにするには、適切な仕組み作りの必要があること―をご理解頂けると思う。本号で取り上げることのできた内容もSEのほんの一部分にすぎないが、読者にとり、SEをより深く、多面的に理解するきっかけになれば幸いである。

(山崎 由希子)

主な執筆者:市川拓也、穂鷹知美、 高田泰、 山崎憲、 鄭城尤、 鈴木岳

目次

巻頭言
社会的養護のもとで育った子どもたちの独り立ちを応援する(宮本みち子)
特集 「シェアリングエコノミー」を学ぶ
概説 日本におけるシェアリングエコノミーの現在(市川拓也)
ヨーロッパにおけるシェアリングエコノミーをめぐる議論と近年の状況(穂鷹知美)
新法施行から1年余り、日本の民泊はどこへ行く(高田 泰)
シェアリングエコノミーに懸念される労働問題(山崎 憲)
韓国・ソウル市におけるシェアリング・サービスの進展(鄭 城尤)
コラム シェアリングエコノミーの国内事例の現況(鈴木 岳)
連載 フォーカス くらしと社会の最新事情⑤
問われる大学医学部入試における女性等への差別 ―消費者団体訴訟の取組―(磯辺浩一)
連載 協同組合系研究所の逐次刊行物より⑤
『農中総研 調査と情報』(『農中総研情報』)(鈴木 岳)
本誌特集を読んで(2019・6)
(勝又博三・樫原弘志)
理事長交代あいさつ
研究所日誌
第29回全国研究集会(10/5)
公開研究会「吉野共生プロジェクト」(8/20・東京)
公開研究会「欧州における有機農業と消費者のつながり」(仮)(9/27・東京)
公開研究会「大学生の読書を考える」(10/12・名古屋)
『生協総研レポート』No.90 「生協共済研究会 2016年度-2018年度の活動」