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刊行物情報

生活協同組合研究 2015年9月号 Vol.476

特集 : 時代の変化に応える宅配事業の革新

 全国地域生協合計の宅配事業供給髙は2010年度以降堅実に伸長し続けてきた。2014年度の供給高は1兆6,627億円,前年度対比101.5%と推計されている。

 堅調な数字の一方で,宅配に携わる生協役職員からは,事業の将来を危ぶむ声も聞こえてくる。「ご高齢者に宅配の利用をお勧めしても,注文の仕方を理解していただくのが難しい」「組合員が他社のネットスーパーに奪われていく気がする」「最近流通雑誌によく載る“オムニチャネル”の生協購買事業への影響は?」・・・。危機感の背景には急速な日本社会の変化がある。少子化,急速な高齢化,既婚女性の就業率の高まり,ITの急速な進化,新しい小売ビジネスモデルの台頭など。今後ますます加速していくであろうそれらの動向は,いずれも生協宅配事業と密接に関わり,未来開発上避けては通れない。

 本特集では,外部識者の方々に,それぞれ以下の切り口から宅配事業の環境変化を分析し,生協への示唆を与えていただいた。矢野経済研究所の川崎氏には食品宅配市場の全体動向から,フリーライターの白田氏には子育て家庭への定性調査から,流通総合研究所の折笠氏にはICT(IT+Communication)の最先端動向から,茨城キリスト教大学の岩間氏にはフードデザート(食の砂漠)の観点から。

 コープネット,大阪いずみ市民生協,コープこうべ,日本生協連にご出席いただき,生協総研が司会を務めた座談会では,宅配事業の未来を語り合った。

 コラムでは,生協総研の佐藤が海外の動向をレポートし,平安女学院大学の山本氏・NPO地域づくり工房の傘木氏からは宅配事業の環境効率を報告いただいた。

 以上のラインアップから何を得ていただけるかは読者に委ねるほかないが,編集担当者から少しだけ述べることをお赦しいただければ,以下の複眼発想を提起したい。1つは,長年磨き上げてきた生協宅配事業の強みである,週サイクルの供給,なじみの担当職員によるルート配達,お気に入り商品などを事業の柱として大事にし,さらに磨いていく視点。もう1つは,10年,20年などの長いスパンで未来社会を構想し,既成概念を超えた生協事業(この場合,「宅配事業」というくくりはすでに意味をなさないものと想定される)の像を描いていく視点である。

 宅配事業の未来開発に向けて,この特集が生協を越えた議論のきっかけとなれることを念願している。

(松田 千恵)

主な執筆者:川崎順子,白田 茜,折笠俊輔,岩間信之,太田俊也,村上正幸,濱西仙欣,稲橋邦彦,小方 泰,
佐藤孝一,山本芳華,傘木宏夫

目次

巻頭言
逆流と大脱線 ──アベノミクスの社会保障政策──(大沢真理)
特集 時代の変化に応える宅配事業の革新
食品宅配市場の現状と展望(川崎順子)
信頼感とブランド力が生協宅配の強み,求められる顧客利便性(白田 茜)
ICT技術がもたらす宅配事業のイノベーション(折笠俊輔)
食の砂漠(フードデザート)問題の実態と宅配事業の課題(岩間信之)
座談会 時代の変化に応える宅配事業革新の戦略(太田俊也・村上正幸・濱西仙欣・稲橋邦彦・小方 泰)
コラム1 海外のオンライン食品小売の動向(佐藤孝一)
コラム2 宅配事業の相対的な環境効率の良さをどう経営と社会に生かすか(山本芳華・傘木宏夫)
海外情報
ICAパリ研究国際会議報告(1)(鈴木 岳)
時々再録
新しい地域自治システムの可能性──第14回コミュニティ政策学会から──(白水忠隆)
本誌特集を読んで(2015・7)
(樫原弘志・有田芳子)
新刊紹介
サリー・サテル&スコット・O.リリエンフェルド著『その〈脳科学〉にご用心──脳画像で心はわかるのか──』(宮﨑達郎)
研究所日誌
第25回全国研究集会のご案内
2015年度第4回・第5回公開研究会のご案内
『生活協同組合研究』目次概要