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刊行物情報

生活協同組合研究 2015年8月号 Vol.475

特集 : 食品スーパー ── 好調を生む戦略 ──

不振の総合スーパー(GMS),好調の食品スーパー
 スーパーマーケット主要各社の2014年度決算が出揃った。一言でいえばGMSの不振と食品スーパーの好調だ。不振が言われて久しいGMSだが,東西両横綱であるイオン(株)とセブン&アイHLDGS.の決算を見れば,もはや不振の域を超えGMSのビジネスモデルそのものが問われる段階に差し掛かっているのではないか,との印象すら持つ。イオン(株)のGMS部門は52億円の損失,セブン&アイHLDGS.のGMS部門(イトーヨーカ堂)も69億円の最終赤字に転落,両社ともGMS部門の業績悪化が減益決算の主因になった。イオン(株)はGMS改革を「グループ横断的に対峙すべき重要課題のひとつ」に位置づけ,GMS改革専任の執行役を配置した。セブン&アイHLDGS.の会長兼CEO鈴木敏文氏は変化対応の遅いイトーヨーカ堂に対する苦言を苛立ちを込めて社内外に広言し,イトーヨーカ堂そのものの改革には殆ど言及せず,オムニチャネルの本格始動でグループ全体の新たな成長を目指すとしている。コンビニエンスストア・ドラッグストア・家電量販店・ネット通販など他業態との競合の激化,そして何よりもスーパーマーケット業界の身内である食品スーパーとの熾烈な闘いに,はたしてGMSは打ち勝てるのか。社会・経済が右肩上がりの時代に「どんと構えて顧客に来てもらう」ビジネスモデルで我が世の春を謳歌したGMSであるが,「顧客に一歩でも近寄る」ことが事業の成否を決するとみられるこれからの時代に,その大きな図体で適応することができるのか。そう遠くない将来に答えが出そうだ。
 一方,主要食品スーパーの業績は好調そのものだ。消費増税をものともせず,増収増益で決算を終えている食品スーパーが多い。特にヤオコーは単独ベースで26期連続の増収増益という信じられない好業績を残している。食品スーパーの業績を見る際に筆者が重視するのは「既存店ベース」の売上推移だが,主だったところを挙げても前期比でヤオコー+5.1%,西友+4%強,ライフ+4.3%,マルエツ+4.9%,いなげや+3.4%であり,平和堂・ヨークベニマル・カスミ・イズミも増収を確保している。この既存店ベースの増収が食品スーパーの好調さを何よりも雄弁に物語っていると言えよう。
 また,好業績をあげている食品スーパーは,それぞれの事業戦略に従って店舗の新設にも手を緩めていない。2014年度に5店舗以上を新たに出店したのはヤオコー9店舗,ライフ8店舗,カスミとヨークベニマルが6店舗であり,増収に拍車をかけている。

市場の変化
 国立社会保障・人口問題研究所の将来人口推計(2013)を見れば,人口減少は今後一段と加速する。2040年までに全国の市町村の半数が消滅する可能性あり,とした増田レポートが世間を騒がせたのも記憶に新しいところだ。超高齢化と単身化(特に高齢者のおひとりさま世帯)も歴史に例を見ない速度で進行する。この人口動態の著しい変容に加え,持続可能性が不確かな社会保障制度(負担増と給付減),雇用の劣化に伴う中間層の縮小(非正規雇用の増大,実質所得の減少,貧困の連鎖)等々,スーパーマーケット市場の規模縮小に直接的な影響を与えると思われるマイナス誘因は数多い。現時点で国内には約1000社の食品スーパーが存在するが,縮小する市場の中での生き残りを賭けた闘いは今まで以上に激化の一途を辿るだろう。ここ3年を見ても毎年50社以上が市場から姿を消しているが,今後も倒産と合従連衡(業務・資本提携,M&Aなど)が増加し続けることは間違いないだろう。

生協の店舗事業
 日本生協連が把握している2014年度の生協全体の店舗事業は速報値で売上が前期比98.7%の8,685億円,経常利益は165億円の赤字(▲1.9%)だった。赤字幅は縮小し,店舗事業を黒字化した生協も幾つかあるが,全体として見れば生協の店舗事業はまだ赤字構造を抜け出せていない。過去20年間に生協の店舗事業で生じた赤字は累計で「最少でも5000億円」,「保守的にみても8000億円は下回らない」,「いや,1兆円に届く」など様々な意見があるが,要は「巨額の赤字」を出し続けているのが厳然たる事実だ。店舗事業で確実に黒字を確保し続けている生協がある一方,いまだに赤字を克服しきれていない生協も少なからず存在する。これだけ巨額の赤字を計上しながら経営を維持できたのは宅配(共同購入・個配)事業と共済事業の利益で店舗事業の赤字を穴埋めしてきたからだ。しかし,赤字穴埋めの原資を稼いできた宅配事業の伸びが鈍化し,共済事業も人口減少(少子)と超高齢化による頭打ちが避けられないことを考えると,この赤字穴埋めの方策をいつまでも継続することはできない。今こそ,店舗事業で赤字を発生させ続けている生協は一切の言い訳を排し,不採算店の閉鎖を含む大手術を速やかに実行し,店舗事業単独での黒字化を実現しなければならない。もうこれ以上,店舗事業の赤字で組合員の大切な資産を毀損し続けることは許されない。

何が優劣を生むのか
 筆者の住む神奈川県藤沢市のJR藤沢駅周辺は北口にイオン(旧ダイエー)・サミット・成城石井(さいか屋地階)・クイーンズ伊勢丹(駅なか),南口にイオン(ピーコックストア)・やまか・OKスーパーマーケット・イトーヨーカ堂がひしめく流通激戦地だが,集客面では「OKスーパーマーケットの一人勝ち」の様相を呈している。OKスーパーマーケットは「第一次藤沢流通戦争」で敗退した西友の店舗に居抜きで進出したが,1階(生鮮・日配)2階(ドライグロサリー・日用雑貨)3階(電気製品・実用衣類・酒類)の階をまたぐ移動にはエレベーター2基しかなく買い回りには最悪の構造になっている。また,殆ど改装をしていない「美しくない」売り場である。にもかかわらず,曜日・時間帯に関係なく他を圧倒する客数で賑わっている。朝10時には駐輪場がいっぱいで空きを待たねばならない時も少なくない。それでも一人勝ちしている理由は極めてシンプルだ。とにかくNB商品の価格が群を抜いて安い。醤油は「やまさ」がメインでキッコーマンは1本も置いていないが(品揃えに制約はあるが),価格を一番の購入動機にしている消費者にとって売り場にキッコーマンがあろうがなかろうが店舗選択には何の関係もないのだろう。低価格!! これが藤沢駅周辺でOKスーパーマーケットが集客上の競争優位を保っている最大の理由,と筆者は判断している。藤沢市は中間層が比較的分厚い地域だと思うが,実質可処分所得が落ち込んでいる状況下では「安さの持つチカラ」(良い悪いの議論はあるが)は健在である。立地・品揃え・接客・クリーンリネス等々,競争力を産み出すエレメントは多々あるが,OKスーパーマーケットに行く度に低価格の持つ顧客誘引力の強さを痛感するのである。
 ライフコーポレーションの岩崎社長は東洋経済オンラインのインタビュー(2015)で好調の要因を聞かれ,「奇をてらったものはない。今まで通り,基本を忠実にやっているだけ。品切れを防ぐ,店をきれいにする,商品力を上げる,美味しいものを作る,などをやっているだけ……後略」と述べているが,それ以外にもトイレを和式から洋式に変えたり駐輪場の段差をなくしたり,顧客の利便性を重視した店舗の改善を続けている。きつい言い方になるが,店舗の赤字を克服できていない生協はOKスーパーマーケットのようなEDLP業態には価格で負け,日常の店舗運営も岩崎社長のいう基本ができていないのかも知れない。
 本特集の狙いは,好業績を続けている食品スーパーの店舗戦略,立地戦略,商品戦略,顧客戦略の「今」と「これから」に迫り,生協の店舗事業の「これから」に資する戦略的要点を示すことである。競争優位を確保する(価格以外の)様々なポイントも示される。
 オール日本スーパーマーケット協会の荒井伸也名誉会長は基調論文「食品スーパー 今とこれから――何が優劣を生むのか――」で我が国におけるスーパーマーケットの歴史を振り返りつつ,食品スーパーにとって欠くことのできない経営上の要点を明らかにされる。国分株式会社の千木良治氏は,「『勝ち組』に向けての『問屋利用論』」をマーケティング視点で実証的に展開,ダイヤモンド・フリードマンの小木田泰弘氏は「食品スーパー“勝ち組” の生鮮・総菜・PB戦略」を具体的に示し,日本経済新聞の白鳥和生氏は「小売業界における『好調組』食品スーパーの位置づけ」で,食のマーケットを巡る業種・業態の垣根の溶解を踏まえた戦略の重要性を指摘される。最後に,みずほ銀行産業調査部の中井彰人氏が立地戦略・店舗フォーマット・商品とサービスの開発・人材確保・投資戦略など幅広い視点から「食品スーパー,生き残るための将来構想」を明示される。
 今回執筆していただいた方々は我が国のスーパーマーケット業界を知ち 悉しつしたプロフェッショナルである。各論考には生協の店舗事業の「これから」に資する要点が数多く含まれている。生協の店舗事業にかかわる方々が本特集から一つでも多くのヒントを得,しっかりと利益を確保する店舗事業のビジネスモデル確立に役立ててくだされば本特集を組んだ者として幸甚の至りである。

(藤井 晴夫)

主な執筆者:荒井伸也,千木良治,白鳥和生,小木田泰弘,中井彰人,森本守人

目次

巻頭言
これからの生協に求められること(新保雅子)
特集 食品スーパー ── 好調を生む戦略 ──
食品スーパー 今とこれから──何が優劣を生むのか──(荒井伸也)
「勝ち組」に向けての「問屋利用論」(千木良治)
小売業界における「好調組」食品スーパーの位置づけ(白鳥和生)
食品スーパー“勝ち組” の生鮮,総菜,PB戦略(小木田泰弘)
食品スーパー,生き残るための将来構想(中井彰人)
コラム 「日本最大の6次産業」を掲げる神戸物産──独自のビジネスモデルを追求、成長続ける──(森本守人)
海外情報
イギリス・コーペラティブ・グループの再生への歩み(佐藤孝一)
時々再録
対談「戦後70年を語る」村山富市元首相,河野洋平元官房長官(白水忠隆)
本誌特集を読んで(2015・6)
(後藤千恵・佐宗健二)
新刊紹介
常見陽平 著『「就活」と日本社会 平等幻想を超えて』(堀井豪人)
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