• 研究所の概要
  • 研究活動
  • 助成・表彰事業
  • 刊行物情報

海外報告
第三回アジア社会的企業研究会議報告【栗本昭・近本聡子】

海外主張の課題と目的

 ヨーロッパ社会的企業研究グループ(EMESネットワーク)第3回アジア社会的企業研究会議への参加と報告

日 程・訪問地

 2014年7月4日~6日 韓国・原州(ヨンセイ大学ウォンジュキャンパス)

報 告(栗本 昭)

 この学術会議は、ヨーロッパの社会的企業研究グループ(EMESネットワーク)がアジアにおける研究ネットワークを作ることを目的としており、2010年台北、2012年天津に続いて韓国・ウォンジュ(原州)のヨンセイ(延世)大学において開催されたものである。
 今回はアジアにおける「社会的企業の誘因、モデルおよび評価の探求」を課題として、全体会とともに7つのセッション(それぞれ3~4の分科会)がもたれ、17か国から69の論文発表が行われた。

 全体会ではチャン・カン・トン教授(香港ポリテクニック)が日本、韓国、中国、台湾、香港の社会的企 業の比較を行い、ペストフの「福祉のトライアングル」における位置づけを行った。これにはあまりに調査変数が少なすぎるという意見が近本を含め日本の研究者からも出されていた。また、マルト・ニッセンス教授(ベルギー・ルーバンカトリック大学)は「社会的イノベーションと社会的企業:ヨーロッパの議論が示すもの」と題する報告を行った。こちらは社会的企業についてかなりヨーロッパに限定的な文脈で今課題となっている社会的イノベーションへの貢献を測定していこうという声明が含まれている。

 最後のまとめとなる会議では、パネリストとして、ジャック・ドゥフルニ教授(リエージュ大学)、北島健一教授(立教大学)、クアン・ユー・ユアン教授(台湾・国立中正大学)、エリック・ビデ教授(フランス・ルマン大学)、ハン・サン・イル教授(韓国・延世大学)が総括的な感想を語った。第4回会議は2016年に香港、第5回会議は2018年に日本で開催することが発表された。

 日本からは、上記の分野に分散したペーパーが出されているが、生協総研の栗本理事は「社会的企業のモデル」のセッションにおいて、東洋大学今村肇教授等と共同で論文発表を行い、日本の医療生協と厚生連という社会サービス提供モデルについて報告した。また、近本研究員は「社会的経済と福祉」のセッションで、日本の協同組合および非営利組織における子育て支援の効果測定」について報告を行った。近本は、これまでのニーズ調査では社会的企業に関しては、公的機関・私企業に比して有意な高い数値は見られない。むしろ満足度測定という利用者と運営主体間のダイアド(2者間)を測定するのみではなく、運営の内部の労働者間や、利用者(主に親)の参画などの測定もしないとならないという提起も行った。同じセッションの国別の比較検証をした研究者も「社会的企業は今のところ雇用の安定性のみで優位な効果をもたらしている」という結論で、「社会的企業であればよいサービスを提供する」とか、「労働しやすい」という推測は今後かなり検証が必要になると考えている。

ヨンセイ大学日記(近本聡子)

 ソウル以外の韓国の街を訪ねるのは初めてである。ウォンジュ・キャンパスは信州の高原のような森と丘に囲まれ、大変過ごしやすい所だ。学生たちは遊ぶところがないね、と冗談をいいあうくらい市街地から車で15分くらい離れたの丘のふもとにある。

 今回は大学の立地する県行政から、財源助成を受けた学術会議であったので、論文受領された研究者は、寝食が提供されるという大変厚待遇の滞在が可能であった。空港からバスの案内を学生さんが担当してくださり、終点バスターミナルでも送迎車が出迎えてくださる。地域で活躍するNPOのリーダー氏が運転しながら、すぐ近くで次回の冬季オリンピックが開催されることや、地域ネットワークの状況、大学生活、社会的協同組合の設立増加など地域がらみの話をしてくださった(会話は全部英語という不思議な空間でしたが)。

 大学寮に着くと、3つのベッドがある20平米弱の部屋に案内され、シングルユースさせていただいた。シャワーもついていた。3人で過ごすにはかなり折り合わないと長期生活は難しいだろうなと思った。窓からは山並みが広がり、カッコーやたくさんの種類の鳥の声が聞こえる豊かな自然の中にある。食事は朝のビュッフェ、昼は韓定食、夜は韓国料理中心のパーティ食など、すべての食事が美味しいものだった。特に韓国料理が好きな私は、完食してしまうくらいだった。キャンパス内には学生食堂やコンビニ、大学生協の店舗などが集まる建物があり、ベーカリーやカフェには近隣の市民の人たちも来ているようだった。

 学術会議はいくつかの会場があり、全体討議は大きな階段教室、分科会はモダンな大きなスクリーンのある教室が主に使用された。論文もUSBですべてが提供され、持参したPCなどで読みながらプレゼンテーションが聞けるという先端的な運営がされていた。もちろん校内ではWiFi接続も許可された。