研究活動

常設研究会 ― 協同組合法制度研究会 第34回報告 ―

○ 開催日時
2018年7月30日(月)17:00~19:00
○ 開催会場
プラザエフ5階 会議室
○ 参加者
17名(委員4名、報告者1名、オブザーバー11名、事務局1名)
テーマ
報 告:
齊藤 正氏(駒澤大学経済学部教授)
テーマ:
「地域社会の発展に貢献する協同組織金融 -協同金融の現状と課題・展望について」
概要

 齊藤正氏(駒澤大学経済学部教授)より、「地域社会の発展に貢献する協同組織金融」と題して、先生の地域金融システムに関するこれまでの研究経過と、現在の地域金融をめぐる問題と課題について報告いただいた。

報告の要旨
1.はじめに

自らの研究活動を振り返ると、3つのテーマに整理でき、それを最近以下の論文にまとめた。

  1. ①信用補完制度 -「地域。中小企業金融に果たす信用補完制度の今日的役割」『同志社商学』2018年3月
  2. ②地域金融システムの再生 -「地域金融」川波・上川編著『現代金融論』2016年12月
  3. ③協同組織金融と協同組合論 -「日本の『協同組織金融』制度の特質と現代的課題」『生協総研レポート』2016年3月ほか
2.地域経済の現況とそれを招いた要因
  1. ①1999年から2014年にかけて中小企業は約100万社減少し、そのうち97%が従業員20人以下の小規模企業となっている。同時期に信金・信組は678から415と263金庫・組合も減った。宇沢弘文氏の言葉で言えば「社会的共通資本」の中の制度資本の担い手である協同組合経営(協同組織金融システム)が大きな打撃を受けている。
  2. ②それを招いたのは、第1に80年代のグローバリゼーションと規制緩和であり、第2に90年代、バブル崩壊後の金融規制(自己資本比率規制、金融検査マニュアル等)の強制適用であった。また協同金融側では、それらの動きに対して協同組合金融機関としての存在を明確に打ち出していくことが弱かった。
3.「地方創生戦略」の下での協同金融の現況と課題

 安倍内閣の下で、「地方創生戦略」が打ち出され、地域の協同組織の役割が期待されているが、現況を見るといくつか問題がある。
 第1は、ガバナンスの問題であり、協同組織の場合トップが代わることが組織改革につながる場合があるが、一方ではトップ依存することの危うさもある。それは協同金融にも当てはまる。第2には、それぞれの組織が「うち向き」で外が見えていない、他の協同組織には関心がない、ということ。例えば「農協改革」、これは協同組合全体に関わる問題であるにもかかわらず、無関心になっているように見える。
 「持続可能な地域社会」づくりに向けた、協同組織金融の今後の課題としては、①協同組合間協同を広げていくこと、②自治体と産業政策やまちづくり政策に参画するなど、包括的連携協定の実行化を進めること、③日本版CDFI(コミュニティ・ディベロップメント・フィナンシャル・インスティテューション)を創設し、地域におけるリスクを利害関係者間でシェアしていくこと、が挙げられる。