研究活動

常設研究会 ― 協同組合法制度研究会 第29回報告 ―

○ 開催日時
2017年9月25日(月) 17:00~19:00
○ 開催会場
プラザエフ5階 会議室
○ 参加者
10名(委員3名、オブザーバー6名、事務局1名)
テーマ
報 告:
宮部好広 氏(日本生協連総合運営本部 法規会計支援部 部長)
テーマ:
「生協の員外利用規制について」
概要

 宮部好広 氏(日本生協連総合運営本部 法規会計支援部 部長)より、生協の員外利用規制について、報告をいただき、質疑・意見交換を行った。

報告の詳細
  • 生協法における員外利用規制は、法制定時からほぼ一貫して中小商業者との関係で規制を求められてきた歴史がある。1950年代の反生協運動、1980年代の生協規制などでは、中小商業者の団体やそうした団体と関係の深い政治勢力から、員外利用条項を根拠にさらなる規制強化が求められた。しかし、2007年の法改正で基本的な組み立て方が変わり、員外利用が許容される事由が法令上に記載される形になった。
  • 日本の生協の員外利用規制の主旨・内容(比較のため他の協同組合の員外利用規制の内容)、沿革とその背景、現状の問題点と今後の見通しについて報告する。
I.員外利用規制の現状と他の協同組合の状況
  • 生協における主な事業規制は、(a) 事業の種類規制(10条1項)と(b) 員外利用規制(12条3項~)の2つがあり、両者を貫く理念的な規定が9条(最大奉仕の原則)であると考えられる。
  • 生協法では、組合員以外による生協事業の利用を禁止(12条3項本文)し、例外として公益的・公共的見地から組合員以外による利用が容認されるケース(12条3項但し書き)と、その他組合員以外による利用が容認されるケース(12条4項)が限定列挙されている。こうした規制の主旨は、(a) 生協の組織原理や基本的性格に由来する側面(本質的側面)と、(b) 商業政策など他の政策目的に由来する側面(政策的側面)の2つに整理できる。
II.員外利用規制の沿革と背景
  • 法制定時の最初の案では、員外利用を認める規定となっていたが、中小商工業者の反対などもあり、原則禁止の規定に変わった。1950年代の反生協運動、1980年代の生協規制などでは、中小商業者の団体などから規制強化が求められ、生協側からそれを押し返す運動が行われてきた。
  • 2007年の法改正時には、日本商工会議所が生協について、競争の対象という観点だけでなく、コミュニティの見地からの重要性、共存共栄を図る相手方といったプラスの評価に変わってきた。こうした背景もあり、省令で列挙する員外利用できるケースの幅を広げるようになった。
III.員外利用の今後
  • 購買事業・共済事業とも、員外利用規制はイコール・フッティングの観点から現状の姿となっており、現行の各制度状況(法人税の軽減税率、共済事業の厚生労働省単独管轄)の大幅な規制緩和は難しい。イコール・フッティングが現実化するような事態になった場合に、生協陣営として統一的な動きがとれるような合意形成(特に「見返り」としての規制緩和を求めるのか否か)はしておく必要があると考えられる。
    (栗本委員から、海外では、協同組合の員外利用を日本のように厳しく規制している例はまれであることが補足説明された。)
配布資料
  • 報告レジュメ「生協の員外利用規制について 」
  • 別冊資料集
その他

 次回第30回研究会は

日時:2017年11月27日(月)午後5時~7時