研究活動

常設研究会 ― 協同組合法制度研究会 第24回報告 ―

○ 開催日時
2016年11月28日(月)18:00~20:25
○ 開催会場
プラザエフ5階 会議室
○ 参加者
17名(委員4名、オブザーバー12名、事務局1名)
テーマ
報 告:
中島 智人 氏(産業能率大学経営学部 准教授)
テーマ:
「イギリスの協同組合にかかわる法制について」
概要

 中島智人先生(産業能率大学経営学部 准教授)から「イギリスの協同組合にかかわる法制について」というテーマで報告をいただき、その後、質疑・意見交換を行った。

報告の詳細

1.多様な協同組合の組織形態

 イギリスでは、協同組合(Co-operative)は2つの意味がある。一つは一般名称(広義)での協同組合、もう一つは狭義の協同組合(協同組合原則に基づく、真正協同組合)。前者は、真正協同組合の他、チャリティとしてのコミュニティ利益組合、チャリティ法人、コミュニティ利益組合、コミュニティ利益会社、チャリティ子会社など、コーペラティブUKの分類でも15種類に分けられる。組織形態、出資、利益配分、ガバナンスも多様だが、非営利で地域社会でのニーズに対応する事業の展開を行い、メンバーによる運営を行っている点で、「協同組合的」な面で共通している。

2.コミュニティ利益会社(CIC)について

 CICは、ブレア政権の時に創設された。当時、社会的排除、荒廃地域の再生、公共サービス改革などが大きな課題となっており、複合的な課題への対処手段として社会的企業への期待が高まった。イギリスには伝統的に民間公益を担うチャリティ制度があるが、その活動の自由度を広げるために、会社法の下で創設された。

 CICは、すべての資産はコミュニティの利益のために活用されるため資産処分の制限や配当・利子制限がある。株主は社員総会で権利行使はできるが利益分配を受けない普通社員と、利益分配は受けられるが権利行使が制限される投資家社員に分かれる。

3.コミュニティ利益会社の実態、実例

 2005年から2015年までに15,104団体がCICとして認証された。事業は、雇用の創出、地域の再開発、文化的サービスなどが多く、株主も地域に住んでいる人たち。

4.日本への示唆

 社会的排除、荒廃地域の再生などの社会的背景は日本も共通しており、その問題を解決するためCICなどの広い意味での協同組「合的」組織の役割が期待される。今年経産省では「地域を支える歳ビス事業主体のあり方に関する研究会」を開催し、私も呼ばれて報告した。CICの事例も参考にして、対応策や制度設計が報告書としてまとめられている(平成28年4月)。

質疑・討議:目的に「社会的文化的目的」が加わった背景、出資金の分割払込制度と現物出資、「持分」「貸分」の概念などをめぐって、議論が行われた。

配布資料 : 報告に関係資料として、下記のサイトが紹介された。