研究活動

常設研究会 ― 非営利法制度研究会 ―

第16回
2014.03.03
報告者 : 関委員、栗本委員
テーマ : 非営利法制度研究会のアウトプットの企画(第2次案)について

関委員と栗本委員からそれぞれ、2012年度から続いてきた非営利法制度研究会のまとめとして作成する論文集の原稿について概要の説明があった。関論文は「憲法上の結社の自由」という視点から明治憲法以来の日本の法人法を近年のNPO法や一般社団・財団法人法を含めて概観し、今後の展望としてより簡潔で明快な法人制度への移行を提示する。栗本論文は協同組合基本法の可能性について、現在の協同組合法制の特徴を振り返ったうえで、韓国やドイツなどの協同組合関連法を検討し、日本における協同組合基本法の可能性を検討する。協同組合基本法の望ましい性質としては、既存の協同組合法を補完し、これらの既存法を改定する際には規範的な影響力を持つこと、政府が協同組合政策に関する窓口を持つよう促すこと、協同組合間協同を促すことなどが挙げられる。両委員の報告の後は、論文集の内容にある程度のまとまりをもたせるための留意点などについて議論が行われた。
第15回
2013.10.11
報告者 : 栗本委員
テーマ : 「研究会の成果とりまとめについて」「協同組合基本法の可能性について」

まず最初に、これまで14回にわたって行われた研究会の成果とりまとめをどうするか、話し合いが持たれた。基本的には学識委員3名と、研究会で報告を頂いた外部からの講師5名、栗本研究員の計9名からの原稿で総研レポートを刊行する。内容が重複しないよう、若干の調整を行った。ドラフトの締め切りは年内、1月の研究会で原稿の読み合わせを行い、3月に刊行の予定。会の後半は栗本委員が、協同組合基本法のアイディアについて説明、委員との質疑応答を行った。この協同組合基本法案は小規模共同組合の結成を容易にすること、事業についても、できうる限り自由に行えるようにすることなどに主眼を置いている。今後は基本法がどれだけ望ましいものであるか、また実現可能性はどうかという点が焦点となる。
第14回
2013.09.30
報告者 : 高瀬雅男氏(福島大学教授)
テーマ : 「独禁法と協同組合適用除外をめぐる諸問題

高瀬雅男氏(福島大学教授)より、「独禁法と協同組合適用除外をめぐる諸問題」というタイトルの報告を頂いた。近年の日本においては、合併や事業連合の増加を通じた協同組合の規模が拡大傾向にあり、また独占禁止法も改正を通じて強化されてきている。また新自由主義的政策(事前規制から事後チェック)の流れと協同組合への独禁法適用除外見直しの動きという現状を背景に、施政者、協同組合の双方に独禁法の適用除外の根本的な考え方を理解することが必要との指摘をされた。過去5~600年間の英国と米国における独禁法と協同組合への適用除外の歴史を振り返り、戦後日本に導入された独禁法の協同組合適用除外規定をめぐる解釈について学説を紹介、国内においてはこれまで、米国よりも広い解釈で協同組合に対し適用除外を認めてきたことの正当性の検証が必要であり、今後は米国の法解釈だけでなく、大陸欧州の例も参考にしていくべきではないかとの見通しを示された。
第13回
2013.07.24
報告者 : 三木義一氏(青山学院大学教授)
テーマ : 「非営利組織や協同組合の税制の問題点と課題について

三木義一氏(青山学院大学教授)より、「非営利組織や協同組合の税制の問題点と課題について」というタイトルで報告を頂いた。日本における法人税法上の法人の種類を確認した後、この法人類型に応じた課税の方法の違いについて説明があった。非営利法人の課税についてはさらに7つほどの法人分類によって異なる税率が課されること、法人課税の根拠について法人実在説と擬制説による考え方の違い、これまで日本では擬制説に従った法制度が作られてきたこと、自身の関わった宗教法人によるペット供養のケースなどについてお話し頂いた。そして日本の税制を良くしていくためには、納税者が主権者としての自覚を持ち、国を監視していくこと、法律を変えていくことが必要との指摘をされた。
第12回
2013.06.18
報告者 : 井上喜之氏(日本生協連)
テーマ : 「公認会計士協会による非営利組織会計の枠組みの構築

今回は井上喜之氏(日本生協連)に「公認会計士協会による非営利組織会計の枠組みの構築」について報告を伺った。公益法人,社会福祉法人など法人形態・業界ごとに会計制度が作られてきたことについて,会計基準の基本枠組み共有,モデル会計基準の開発,会計基準統合化というアプローチを提案しており,大変参考になった。
第11回
2013.05.23
報告者 : 栗本 昭氏(生協総研)
テーマ : 「生協法見直し検討委員会報告について

今回は栗本委員から韓国の協同組合基本法施行(2012年12月)後の協同組合および行政の動きと改正された韓国生協法の問題点について以下のような報告を行った。3ヶ月間で7件の社会的協同組合を含む500近い協同組合が設立・認可されており,協同組合は大きなブームとなっている。財政企画部(財務省)およびソウル市は積極的な協同組合支援策を取っているが,その内容は人件費等の直接支援ではなく,コンサルティング,啓発,研修などの環境作りが中心となっている。協同組合陣営も新協同組合の設立支援に取り組んでいる。改正生協法に基づいて多くの疑似医療生協が設立されるという問題も生じており,医療生協は社会的協同組合に転換することを目指している。
第10回
2013.04.08
報告者 : 竹内誠氏(東京都生協連専務理事)
テーマ : 「生協法見直し検討委員会報告について

竹内誠氏(東京都生協連専務理事)より、2012年1月に東京都生協連のまとめた生協法改正に関する提案について、報告を頂いた。要旨は以下の通り:2008年に施行以来初めて生協法が改正されたが、ここに到るまでに大店法の生協店舗への適用や員外利用規制が主な検討課題となった1986年の厚生省「生協のあり方に関する懇談会」や、社会と生協の変化に対応しようとした1999年「生協のあり方検討会」などにおける応酬があった。2008年の改正にあたっては東京都生協連も2003年に生協法等検討小委員会を設け、2005年に生協法改正に関する提案を行っている。同法の再改正に向けて2012年に都連の提出した基本的考え方のポイントとしては、組合設立方式の簡素化、残余財産分配に制限を設けること、組合基準の現代化などがある。2013年4月より省令改正があり、災害時(ならびに避難被災者)の対応、生協加入を検討している人へのサービスなどについて一部緩和された。
第9回
2013.03.04
報告者 : 明田作氏(農中総研)に「米国の統一有限責任協同組合法〔案〕について:制定の背景、法律の性格とその内容」
テーマ : 「非営利法人制度の20年―その変遷・多様化と今後の課題

アメリカは州法中心で,協同組合法も州ごとに制定されているが,統一有限責任協同組合法〔案〕は新世代農協などの新しい組織形態に対応するために州ごとに制定されてきた協同組合法を統一する意図をもって300人の専門家によって作られたモデル法である。2007年の統一法発表後,各州の法律はこれに準拠するようになった。対象となる協同組合の法的性格はLLPに近く,パススルー税制の適用を可能にしている。内国歳入法の協同組合への適用についても詳しい解説があった。
第8回
2013.02.19
報告者 : 加藤好一(生活クラブ連合会会長)
テーマ : 「生協法見直しに関わる提案とその問題意識

加藤好一氏(生活クラブ連合会会長)より、「生協法見直しに関わる提案とその問題意識」というテーマで報告を頂いた。生活クラブの概要、沿革、現在に至るまでの多様な活動の紹介などに続いて、2012年3月に提出された生協法改正に関わる共同提案について説明を頂いた。具体的には事業業種の拡大や保険業法による共済規制の廃止、生協設立要件の簡便化などが含まれ、それらが盛り込まれた背景には、生活クラブの過去の活動の中から生じたさまざまな問題意識や、社会経済環境の変化によって生じた生協に求められる役割の変化、レイドロー報告で示された企業とは異なる協同組合の特色の追求といったものがあるということが理解された。
第7回
2013.01.28
報告者 : 山岡義典(日本NPOセンター顧問、法政大学名誉教授)
テーマ : 「非営利法人制度の20年―その変遷・多様化と今後の課題

山岡義典氏(日本NPOセンター顧問、法政大学名誉教授)より、「非営利法人制度の20年―その変遷・多様化と今後の課題」というタイトルで報告を頂いた。明治以来の公益法人制度の変化と公益概念の転換について、法文の言葉遣いの違いを例示されつつ説明を頂いた。また、改革前後の各種非営利法人制度のあり方と、それらの法人の税制における扱いの違いを図と共に詳しく解説され、いかに複雑化した制度になっているかがよく理解された。最後にNPO法人と一般法人の設立に関わる条件等をご教示頂き、この二種の法人については認定評価基準が全く異なるため、一つの制度を作っていくのは難しいこと、しかしながら、長期的には統合される可能性もあるとの見通しを示された。
第6回
2012.12.10
報告者 : 後房雄(名古屋大学)
テーマ : 「日本におけるサードセクターの構築と協同組合」

後房雄氏(名古屋大学教授)より、「日本におけるサードセクターの構築と協同組合」というタイトルで報告を頂いた。自身が特定非営利活動法人運営に携わった経験も交えつつ、制度の導入から15年近く経った現在、これらの法人と呼ばれる組織に見られる、今後改善が必要な問題(事務局体制、経営能力の弱さ、中間支援組織の業界団体化、特に資金集めについて他力本願な傾向など)についてお話しされた。またさまざまな公益的活動を行う法人が、それぞれ分野の異なる主務官庁の下に監督されているために、創造的かつ自由な活動が阻害されている問題については、特定の活動への参入規制を撤廃することで解決されるのではないかとの見通しを語られた。    
第5回
2012.11.12
報告者 : 田島誠一(日本社会事業大学)
テーマ : 「社会福祉法人の制度問題」

田島誠一氏(日本社会事業大学教授)より、「社会福祉法人の制度問題」というタイトルで報告を頂いた。制度導入時から今日に至るまでの社会福祉法人制度ならびに政策的背景の時系列的変化について概観した後、制度の発展に伴う歴史的な問題(法人としての申請手続きよりも施設建設認可が重視されていたこと、行政による「措置」制度の独占的受託先としての地位を獲得したことによる弊害等)、現在の社会福祉法人が抱える問題(サービス向上意欲の弱さ、信頼性の低い組織ガバナンスのあり方等)、今後、目指すべき姿などについてお話を頂いた。また、社会福祉法人と民間営利企業(あるいは医療法人等)が同じ事業を行っても異なる税制が適用されるといった点も指摘され、日本における縦割り型の法人制度の問題も提起された。
第4回
2012.10.22
報告者 : 太田達男(公益法人協会)
テーマ : 「公益法人・一般法人及び特定非営利活動法人の制度比較と課題」

太田達男氏(公益法人協会)より「公益法人・一般法人及び特定非営利活動法人の制度比較と課題」というタイトルで報告を頂いた。公益法人制度改革について、市民の自発的な公益活動を支援する制度になったという全体的な評価の一方で、今後も残る問題点(活動を阻害する法律の問題など)が指摘された。また、新しい公益法人制度と特定非営利活動法人の制度を比較、それぞれの特色をご教示頂いた。さらに、公益社団法人と認定特定非営利活動法人の制度比較についても言及され、最終的にはすべての公益を目的とした法人をカバーする基本法と、事業法として規制すべき部分を別法とする法律改定の必要性が指摘され、過去の研究会に通じる視点も提供された。
第3回
2012.09.03
報告者 : 佐藤岩夫(東京大学)
テーマ : 「非営利法人のガバナンス:理論的整理および課題の確認」

1. 佐藤委員より「非営利法人のガバナンス:理論的整理および課題の確認」というタイトルで報告を頂いた。日本においては非営利組織のガバナンスについて理論的に未開拓であるとの問題関心に立ち、米国における法と経済学分野を中心とした非営利組織(企業)のガバナンス論を手掛かりに、日本の非営利法人のガバナンスをめぐる議論を整理、現行制度の検証を行った。また、非営利法人のガバナンス問題として、恒常的な監視者の不在、組織目標の評価基準の不明瞭さ、エージェンシー問題が指摘され、特に3番目にあたる事業執行者の裁量の統制の困難さを明らかにした点にガバナンス論の意義を認め、今後はそのメリットも考慮に入れたさらなる理論化、具体的な方策・制度設計の必要性が指摘された。

2. 年内(10月、11月、12月)の研究会の日程・時間を確認した。
第2回
2012.07.14
報告者 : 中島智人(産業能率大学)
テーマ : 「イギリスの非営利法人制度」

1. 中島委員より「イギリスの非営利法人制度」というタイトルで報告を頂いた。イギリスのチャリティと呼ばれる団体が、どのような考え方からその資格を与えられているのか、背景に見られる公益の概念など、日本の非営利法人制度を考えるうえで参考となる事例が紹介された。また、厳格なチャリティ団体の規格に対し、より柔軟な制度を持ち、地域の利益のために活動することが認められるコミュニティ利益会社が2004年から新しく導入されたことについての説明があった。最後に、英国政府の近年の政策について言及され、予算削減を望む政府が、さまざまなサービス提供の分野で協同組合方式の組織への委託を進めようとしていることが報告された。

2. 10月の研究会日程
第4回研究会のおおよその日程(10月15、16、22日のいずれか)を決定した。
第1回
2012.05.29
報告者 : 関英昭(青山学院大学)
テーマ : 「我が国における団体法の歴史」

1. 研究会の座長の選任
事務局からの推薦で関英昭氏が研究会座長に選任された。

2. 研究の進め方に関する討論
栗本昭、宮部好広両氏より、研究会立ち上げの経緯、問題関心について説明があり、①生協法改正に関わり、今後どうするか、②NPO法全体の中に協同組合を位置づけられるかといった視点から研究会を行うこととなった。

3. 関委員より「我が国における団体法の歴史」というタイトルで報告を頂いた。日本の多数の法人制度の歴史を振り返り、法人制度間の不整合を指摘された。また民法における「法人」、「公益」といった言葉の問題点についても言及jされた。

4. 今後の日程
第2回日程および報告者と、第3回のおおよその日程を決定した。